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5
彼女は人気者だった。
彼女は小学5年生の頃に転校してきた。
名前は、『シアン・バーナード』で。
僕は彼女が転校して来た日に休んでいて、彼女の存在を知らなかった。
だからあの日話しかけられるまで、名前も見た目も知らないクラスメイトに、自分と似た見た目をした人がいるとは思わなかった。
彼女に出会うまで、クラスにいて学校にいて、ずっと自分が気持ち悪くてしょうがなかった。
僕は異常で、そして、僕以外が正常な世の中だった。
学校の中で、帰る時だって、どこを見ても僕と同じ見た目の人はいない。
僕は違和感を覚えていた。
そんなある日のことだ、先生が頭を強く殴ってきた。
背後から、思いっきり。
僕は痛くて頭を抑えた、その時。
「校則違反だぞ。なんだその髪は、茶色に染めおって不良か。頭を抑えて、バレてから隠そうとするくらいなら、はじめから染めてくるな。分かったか、はいは?」
僕は、なにを言われているのかわからなかった。
ただ痛くて、涙が溢れてきた。
どうしようもなく、涙がとまらない。
僕は泣いて、
「ごめんなさい」
と何度も、何度も、言った。
気づけば周りは騒がしくなっていた。
他の先生たちや同級生なんかが何人も集まっていて、恥ずかしい。
先ほど僕を殴った先生は、大きな声で他の先生と話している。
僕の近くには若い女性の先生が来てくれた。
「大丈夫? 痛くない?」
でも涙が止まらない。
若い女性の先生は頭を撫でてくれる。
「たんこぶ出来ちゃうかもしれないから、保健室いこっか。」
僕は、もう良くわからなくない。
優しい声が、相手を見るたびに怖く感じる。
「僕が悪くて…全部…」
しゃべればしゃべるほど、涙が出てきて苦しくなる。
若い女性の先生はまた僕の頭を撫でて、僕の手を握る。
行こ、そう言って手を引かれて歩く間。
心が苦しかった。ズキンズキンっと痛んだ。
その痛みが強まるたびに、
「ごめんなさい、ごめんなさい」
僕は言い続けた。
そう言うたび、痛みが少し和らぐような気がした。
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