ロブおじさんとシアンの森

2.

「誰ですか」

夏のある日。
木で作られた扉を誰かが叩く。
ロブおじさんは額にシワを寄せ扉を開けた。
開けた先には黒服を着た2人組の男がおり、ロブおじさんを見つめ笑っている。

「ロブさん、こんにちは。今日はお火柄も良く、シアンの森はいつも以上に色鮮やかな自然が広がっていますね。」

やせ細ったヒョロガリな黒服が白い歯を見せつけるように笑顔を魅せる。
キラリと魅せるその顔は皮膚の下から骨が浮かび上がっており、青白い肌に対して綺麗で白い歯が不調和でなんとも不気味だ。
目をそらすように、ロブおじさんは下を向く。

「すみません、なんの御用でしょうか？」

黒服たちは互いの顔を見合って笑みを浮かべる。
実はですね。
ヒョロガリではない方の黒服が手に持っていた革製のカバンを漁りはじめ、ロブおじさんにみえるように、太く丸みを帯びた手を前に突き出し、手元に握られた1枚の紙をみせつける。

「こちらをみていただければ、分かるかと思います」

軽く会釈して、ロブおじさんはその紙を両手で受け取る。

──ロブおじさんはその紙に書かれたことを読み始めた。
はじめは穏やかな顔が読むうちにだんだん険しくなっていく。
ロブおじさんは3分ほどで読み終えた後、黒服たちに紙を両手で返す。

「御足労して頂いたのにすみませんが、こちらの紙に書いてあった立ち退きの件お断りさせていただきます。」

ロブおじさんは頭を軽く下げ、黒服たちが何か言おうと口を開くのを静止するように、強く玄関の扉を閉めた。