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4.
シアンとはじめて会ったのは、まだ恋愛と言う言葉すら知らないほど幼い頃だった。
「なに読んでるの?」
彼女は、僕に話しかけてきた。
しかし僕は自分以外に誰か周りにいないかと、首を動かす。
周りを見ると何人も人間がいて、僕に話しかける奴なんていない。
こいつもそうで、僕は、こいつが話しかけた人の間に居るだけだ。
そう思って、下を向いて、手元の文庫本をふたたび開き読み始める。
少し時間が経って、文庫本を少し右に動かして、右下に少し目を向ける。
まだ話しかけてきた時と同じところにやつはいた。
「……。」
読書が進まない、こいついつまで居続けるつもりなんだ、読書の邪魔なんだけど、そもそも人間と話したくないし、さっさとどっか行ってくれないかな。
大体、なーー。
「その本面白い?」
「え、? あ、ごめんなさい、面白いで、す。」
僕はキョドッた。
右にいたやつは僕の前の席に座る。
僕は身構えた。
「どんな本なの?」
「……。」
下を向いていると、顔を汗が流れてくる。自分のズボンをじっと見つめる。
お前がいたから全然読み進められてなくて、全然内容頭に入ってないし、今日読み始めた本だし、マジ責任とってほしいし、慣れ慣れしくしーー。
「聞こえてる?」
「え? あ、その、その、しゅ、主人公がカッコよくて、で、その、仲間、達と冒険したり、するお話です……。」
内容もろくに頭に入ってもいないのに、口は動いた。
少ししてから目の前で椅子が揺れる音がした。
そうなんだ。目の前のやつは言う。
「うーん、気になるから聞くんだけど、どうしてロブくんはいつも一人でいるの?」
え? 一人?
いきなり言われた。なんでそんなこと言うの?
そう想った。
僕は顔を目の前に向ける。
「しnーー。」
しかし、目の前の子の顔を見て言葉が出なくなった。
「それは、その、あの」
再び下を向く。
ボソボソと口を動かして、何を言えばいいかーー。
「言いたいことがあるなら、言いなよ」
目の前の子は、今までよりも強い口調で言ってくる。
口が上手く動かない。張り付いたくちで声で、僕は言う。
「そ、そっ、な、なんで目が青いの?」
僕は口を動かした。
ちゃんと聞こえたかもわからない声で。
少し間が空く、少し上を見る。
彼女は、きょとんとした顔で僕を見ていた。
「君だって、青いじゃん」
その子は少し笑っていて、僕の顔も動く。
その子の青い目には僕の青い目が映っていた。
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