ピエロは笑う

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「キミの人生がかかっているんだろう。気にすることはないさ。たまたま見えてしまったんだ。これは神が与えた機会なんだよ」  ピエロが笑ったら、自分が信じる信念を思い出すこと。信念は強固な盾を持つ騎士(ナイト)となって、本当に大事なものを守ってくれる。そして、踏みとどまれたからこそ、僕の父が生まれたのだと言って、祖母は祖父の遺影を眺めた。二人の間には遠い昔に起きた誰にも言えない秘密があって、それがピエロの話と関係しているらしい。結局詳しい話は聞けなかったが、祖母は決して冗談を言っているようには聞こえなかった。  そんな祖母も少し前に亡くなった。この先の自分にとってどうするのが正しいのか。もはや考えるまでもない。 「怠惰の化身よ。この者の心は決して揺るがぬ。お前の出る幕はないのだ。立ち去るがいい」  鎧姿の女騎士が、ピエロに向かって剣を向けた。 「フフフ、怖いねえ。いつまでそんなことを言っていられるのか、見守っていてあげるよ」  おどけて見せたピエロは、煙のように消えてしまった。
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