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「君の気持ち、よくわかるとも。自分がしでかした事の大きさに耐えられない。やったのは自分じゃない。そう信じたいよね。なら、いっそのことそうしてしまえばいいんだ」
「馬鹿なことを言うな。この場から逃げたところで、罪が消えるわけでもない。冷静に自分の行いを見つめ、悔い改めるべきだ」
背後から別の声がして振り返ると、こちらには水色の光を放つ鎧の女が立っていた。
「馬鹿はキミの方だろう。自覚すらしていない罪を認めて、納得いかないまま生きることが正しいと思うかい?」
「愚かな。自身が犯した罪を無視して平然と生きるなど、神をも恐れぬ醜悪さだ」
「フフフ、神様が人間に何をしてくれるっていうんだい」
「敬虔に生きてこそ、神の導きを得られるのだ。貴様のような存在にはわかるまいが」
「なんとも能天気なやつだ。……まあいい。判断するのは、彼女だ」
わたしは何を見ているのだろう。あまりに現実離れした光景に、しばらく思考が追いつかない。これはわたしが生み出した夢か幻の類に違いない。提示された二つの道のどちらを選んでもまっとうな人生になるとは思えない。どうしてこんなことになってしまったのか。冷汗がにじみ、動悸が激しくなっていく。
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