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「キミが望むのなら、真実を知る機会を与えよう」
ピエロが両腕を開くと、空間に大きな鏡が現れた。銀色に輝く美しい鏡面には何も映っていない。
「さあ、鏡に向かって真実を知りたいと念じるんだ」
「やめた方がいい。その鏡は欲望を映し出す魔鏡だ。捻じ曲げられた真実を見ることになるぞ」
「フフフ、この鏡に映った事実は本物になる。例えそれが見る人間が描いたニセモノの記憶でも、全て真実になるんだ」
それを見ていた鎧の女は手のひらを上に向け、水晶玉を作り出した。
「この〝真実の水晶〟は嘘偽りのない真実のみを映し出す。事実を確認したいのなら、こちらを選択するべきだ」
「まったく、融通の利かないヤツだね、キミは」
またしても選択を迫られた。
鏡を選んだ場合は、わたしの心に迷いがあるということ。でもその先にあるのはわたしの心が望んだ道なのだろう。
水晶を選んだ場合は、まぎれもない真実を知ることが出来る。その先にあるのは元の生活か、あるいは罪を背負う道か。
利己的に生きる人間なら迷わず鏡を選ぶだろう。だが簡単に割り切れない、もやもやした感覚がどうしても拭えないのだ。
「さあ、早く選びたまえよ。ボクだって暇じゃないんだからさ」
「何を迷う必要がある。真実を選び取ることこそが、人の生きる道のはずだ」
「選びたまえ」
「恐れるな」
「早く」
「真実をつかめ」
迫りくる二人の姿が混じり合い、わたしの意識は暗転した。
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