ピエロは笑う

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「なんなんだ、あんたたちは」 「ボクらは心の化身だよ。荒ぶり高まった人の心から零れ落ちた残滓さ」  それを聞いて腑に落ちた。わたしの中には今、二つの感情がある。彼女を恨む気持ちと、信じていたい気持ち。相容れない感情が衝突して混乱をきたしているのだ。  追い詰められた人間は、時に狂気に走る。取り返しのつかない過ちを犯して振り返っても、もう遅い。だからこそ、誰かが導いてやらねばならない。理解していたつもりだったが、人生というのはそう都合よくはいかないらしい。 「彼女を恨むつもりはこれっぽっちもない。わたしが彼女ときちんと向き合い切れていなかったのが悪いんだ」 「フフフ、そうかい。いつまでそう言っていられるかな? ボクたちの形を作るのは、あくまでキミたち自身だ。そのことを忘れないことだね」  ピエロの不敵な笑い声が闇の中に吸い込まれていく。心が形を失い、わたしの人生もここで幕を閉じるのだ。
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