サルとタテワキ

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 近くにいた人たちが、座席(座ってた人たちが席を空けてくれた)に女子高生を運んでくれた。 「知り合い?」 「いえ」 「この子、前にも具合悪くしてたねぇ」  優先席のおばあちゃんが言った。  車掌さん(誰か呼んでくれたらしい)が連絡してくれたらしく、次の駅に着くと男女の駅員さん二人が迎えに来ていた。  駅員さんから事情を聞かれた。知らない人だけど何故か名前を呼ばれたので返事をしたら倒れた…と、そのまま伝えたら変な顔をされた。オレだってなんだか分からない。  駅員に疑われて、オレは一緒に電車を降りた。  別室で独り待つ間、大きな不安と、少し責任を感じていた。  オレどうなるんだろう。これで捕まったりするんだろうか。こんなわけわからんことで前科つくの? どうしよう。どう説明したらわかってくれるだろう。  にしても、名前で呼ばれてつい喜んでしまったけど、やっぱり知らない人だったんだ。聞き間違えだったのかもしれない。オレはそんな体大きくも怖そうでもないけど、見知らぬ男に話しかけられたら不気味だろうな。  にしても、何と聞き間違えたんだろう。 「うーん…タテワキ…たてがき…たてまき…タテワキ…?」 『ここに』 「⁈」  膝においたオレの手を、大きな左手が掴んだ。  大声を出しそうになったけど、出なかった。手を振り払うことも出来なかった。  その左手は、人差し指に目玉みたいな指輪をしてて、その明るい空色の瞳を見たら、驚いたり騒いだりする気持ちがスーッと消えていったのだ。なんだこれ。 『はじめまして、帯刀様』 どこかから声がする。 『私が、さきほど天塩アスカお嬢様に呼ばれた「タテワキ」でございます』
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