世界の果てまで僕らは逃げた

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 その後のことは憶えていません。  砂浜にいた「迎え」の彼らが僕たちを見付け出したのか、それとも海を巡回していた船などが僕らを引き上げたのか、どちらでもどうでも良いことです。  どうしてあなたがたが僕を助けるのか、僕にはまるでわかりません。  したくもない争いをしに行くくらいなら、そこで誰かを傷つけ、あるいは誰かに傷つけられて死ぬのなら、僕はここで僕のまま死にたいと願っています。……佐々木が守ってくれた命を終わらせてしまうのは不本意でしかありませんしどうしようなく申し訳ないけれど、他にどうすればいいのか、もう、よく分からないのです。  佐々木が守ってくれた僕のまま、「戦争は嫌だ」と足掻く人間のままでいたいのです。決して送り出されたくなどはありません。  だからそうやって食事を持ってきてくれても、食べる気などはありません。  僕の最後の晩餐は、佐々木と二人で焼いて食べたあの魚なのですから。
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