世界の果てまで僕らは逃げた

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    * 「僕らは逃げ切れたのだろうか」  僕が青い海を眺めながら呟くと、佐々木は「どうだろうな」と答えました。  海が広くて青いのも、太陽が暑くて肌を焼くようなのもこれまでと何一つ変わらないのに、世界は僕らを置いて変わってしまいました。  当事者である僕たちの心は無視され置き去りにされたまま、ひどい変化をしてしまったのです。 「世界の終わりまでこうしていられればいいのに」  不安と一緒に膝を抱えて口にしました。  スマホもパソコンも置いてここまで来たから、今が何時なのかすらわかりません。服さえ替えはありませんでした。生き延びるための食料と飲み物だけを抱えてここまでやってきたのです。 「他のみんなはどうなっただろう」  昨夜のうちに逃げ出してきたあの場所――高校の寮のみんなを思い出します。 「わからんが、とりあえず――」と、佐々木がようやく口を開いてくれました。 「宇塚とだけでも、ここまで来られて良かった」  それは僕に安心を与えてくれる言葉と声音で、僕は、あぁ良かった佐々木は後悔していない、とほっと胸を撫でおろしました。
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