世界の果てまで僕らは逃げた

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    *  陸地の果てに海はあります。そこから先へは、歩いて進むことは不可能です。  だから見つかるのを避けるために移動するのなら、選択肢は海と陸の境界を延々と歩くか、元来たところを戻って別の方角へ向かうか、となるのでしょう。  けれど僕と佐々木は、そこが終着点だとなぜか思っていました。  僕らは世界の果てまで辿り着き、だからここより先へは向かえない、と。 「見つかるのは時間の問題だろうな」  佐々木は声に何の色も乗せずにそう言いました。  そうかもしれないな――と返答しようとした矢先、にわかに物音と人の声が聞こえてきました。  僕らが抜けて来た林の方から、人の来る気配がしてきたのです。  佐々木はすぐに立ち上がると、僕の腕を掴んで立ち上がらせました。 「泳げるか」  その問いかけに、僕は震えながら頷きます。  ここより先に陸はありません。進みたいなら、水の中を行くしかないのです。
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