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私はそれを「魔法」と呼ぶ
「昨日はね、お祭りがあったんだ」
窓の向こうで、レティが笑った。陽射しを浴びて、彼女の金髪がきらきらと輝く。
「広場にサーカスも来ててね。すごいんだよ。たくさん火を使うの。火のついた輪を、ライオンがくぐったりとか。ピエロが火を噴いたりとか。だけどお客さんの熱も負けないくらいにすごくて」
楽しそうなレティを見ていると、自然とこちらまで明るくなる。
「お土産、ここに置いておくね。来年は、ルーナも一緒にお祭りに行けるといいね」
「うん。ありがとう」
レティは「また明日」と手をふって去っていく。その姿が木立の奥に消えるまでを見守って、私は小屋の扉を開けた。
しん、としていた。夏の強い陽射しが地面を焼いている。でも、それだけだ。レティの言っていたような祭りの喧騒なんて、この木立の奥にある小屋には微塵も届かなかった。
窓の下を見ると、瓶詰めにされたキャンディが置かれていた。ひと口サイズの鮮やかなキャンディは、レティのようにきらきらしている。
――いいな、お祭り。
でも私は、この小屋から出られない。私は、魔道に堕ちた子どもだから。
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