狂炎の魔術師は過去を語る

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 軽く握手をし、頭を下げると先ほどの女性が丸椅子を持ってきてくれた。お礼を言って座れば、女性は「お茶を淹れてきます」と一旦部屋を出て行った。  ドアが閉まったのと同時にまずは謝罪から入る。 「すみません。本当は私ではなく先輩……テイラー本人が来る予定だったのですが」 「事情は聞いています。今、王都で起こっている連続行方不明事件を追っていると」 「はい」 「あなたもそちらに行きたかったのでは?」 「え? いやいや! 今日はお会いできると聞いて興奮してしまって。昨夜は中々寝付けず寝不足なくらいですよ」  心中を見透かされて慌てて弁明したが、誤魔化せただろうか。寝不足なのは昨日急にインタビューに行くことが決まり、名前しか知らなかった相手について調べていたからだ。  しかも他国から命を狙われるため、様々な情報が非公開となっている軍属のS級魔術師だ。昨夜は過去の新聞記事をひたすら漁り、今朝も軍の資料室で可能な限り情報を仕入れてきた。
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