1人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
狂炎の魔術師は過去を語る
正直なことを言えば、先輩に同行したかった。
いやしかし、穴埋め記事とはいえひとりで取材に行かせてもらえているのも事実だ。例え取材先が大戦で活躍した魔術師で、載せるかわからないインタビューだとしても。仕事だから文句は言えない。
「……えっと、ここだよね?」
相手の滞在先は城下街外れにある民宿だった。お世辞にも綺麗とは言えないが、本当にあっているのだろうか。そもそも軍の魔術部隊でS級魔術師なら王都の一等地に家を持っているはずなのだけど……。首を傾げながら、先輩から預かったメモを確認する。書かれた宿の名前と住所に間違いはなく、さらに「受付に王国新聞の記者であると告げれば通してもらえる」と書かれていた。
恐る恐るドアを開けばカランカランと鈴が鳴り、奥から小柄なおじいさんが出てきた。
「いらっしゃい。お泊りで?」
「あ……えっと、私、王国新聞社のカトーと申します」
「王国新聞? ああ、少々お待ちを」
よたよたとまた奥に引っ込んだおじいさんはすぐに戻ってきた。2階奥の部屋でお待ちです、と、階段を指さすおじいさんにお礼を言ってから部屋へ向かう。
最初のコメントを投稿しよう!