狂炎の魔術師は過去を語る

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 薄暗い廊下を抜け、言われた部屋のドアをノックする。返事もなく開いたドアから出てきたのは小柄な女性だった。 「あ、えっと」 「王国新聞の方ですね、お待ちしておりました。どうぞ中へ」  にこりと笑った女性はドアを大きく開けて部屋へと通してくれた。ベッドがふたつに小さなカウンターテーブルと鏡が置いてあるだけの簡素な部屋だ。  そのカウンターテーブルで本を読んでいる男性がいた。線が細く一見すると女性のようだが『狂炎の魔術師』の異名を持つ天才魔法使い。 「先生、新聞社の方がみえましたよ」 「ん? ああ、もうそんな時間なんだね」  読んでいた本を閉じ、立ち上がった彼は思ったより上背があった。それでも恐ろしさを感じないのは優しい顔立ちに、落ち着いた声音をしているからだろう。 「初めまして、クリス・ハワードと申します」 「王国新聞のマオ・カトーです。今日はよろしくお願いします」
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