狂炎の魔術師は過去を語る

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 ええ、と頷いたクリスさんは懐かしそうに目を細めた。学生はノエル・ウッドと名乗った。年はクリスさんより5つ程上で、混乱スキルを持っていたという。教師志望で見識を広めるため旅をしており、立ち寄った町や村で子どもたち相手に勉強を教えていた。  ならば、スキルの制御も教えてくれるのでは。そう考えた彼の両親は、村に滞在している間の衣食住を保証する代わりにスキル制御を教えてくれと頼んだという。  ノエルさんは魔術に秀でていたわけではなかったが、養成学校への入学まであと1年ほどしかなく、藁にもすがる思いだったのではと。 「最初は断られました。教師といっても歴史や国土など座学の方で、実技は無理だと」 「それは、そうですね」 「ですが、私が本当に困っていると伝えればできる範囲で協力すると了承してくれました。それからは先生と呼び、教えるというよりは一緒に制御方法を考えたといった方が正しいかもしれません。いろいろなことを試しました」
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