Days20 摩天楼

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Days20 摩天楼

 彼から突然LINEで夜景の写真が送られてきた。数え切れないほどの高層ビルが立ち並び、どれもぼんやりと光を放っている。さほど暗くもない濁った夜の闇の中、その建築物の群れはどうも不気味で、魔都東京、という言葉がよく似合った。本当に東京かどうかはわからないけれど。  しかし気に掛かったのは、それが下から撮ったものではなく上から撮ったものであることだ。彼は摩天楼を見上げているのではなく、見下ろしている。この時間に超高層ビルのどこかから夜景を見下ろしているということだ。 『どこにいるの?』  すぐに返事が来た。 『新宿のとある超高級ホテルのスイートルーム』 『なんで?』 『ママ活』  わたしはぴたりと手を止めた。何のことかよくわからなくて、思わず検索してしまった。ずらりと並ぶ犯罪行為のネット記事に、くらりと目眩がする。でも、やりそう。倫理観がないから。  わたしが返事をしないので、焦ったらしい。 『嘘』 『兄貴と一緒にいる』 『兄貴がいいホテルで贅沢したいんだけど一人で行くの不安って言うからお供してる』 『他人と行くと文春砲をくらうらしいから』  彼のお兄さんは芸能人で高額納税者だと思われるレベルのお金持ちであることが予想されるので、まあそういうこともあるのだろう、と思った。 『お兄さんによろしくね』  すぐに返事が来る。 『兄貴が今風呂に入っててひま』  なるほど、一人がだめなのは彼もなのかもしれない。彼には妹がいるけれど双子なので、実質的には末っ子なのだ。高校では単独行動が多いような気がしていたが、そういえば放課後はずっとわたしと一緒にいるなあと思―― 『激しく抱いてやったぜ』  脳内にいつだか裸で雑誌の表紙を飾っていた彼の妖艶な兄の姿の顔が浮かんだ。 『よかったね。おめでとう。』 『嘘嘘嘘嘘』 『ごめん許して』 『嘘だから!』  わたしはスマホを机の上に伏せて勉強に戻った。
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