Days26 深夜二時

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Days26 深夜二時

「最近兄貴のインスタにはまっててさ」  スマホを眺めていた彼が言う。 「お兄さんのインスタ?」 「そう。長いことやりたくないって抵抗してたんだけど、事務所のやれっていう圧にとうとう屈したとかで、二、三ヵ月前にアカウント開設したらしくてさ。クラスの女子が見つけて教えてくれたんだけど」 「何かおもしろいこと投稿してるの?」 「すごいどうでもいいことばっかり投稿してる。ふつうファンが役者に求める投稿って、自撮りとか俳優仲間とのやり取りとかじゃないかと思うんだけど、自分で作った特に映えない手料理とかを投稿してる」  そもそもSNSをやっていないわたしには想像がつかない世界なのだが。SNSってなんだか怖いところというイメージがある。インスタもTwitterも投資詐欺が横行しているとテレビの情報番組で見た。 「昨日の夜中の兄貴の投稿がさ」  彼がスマホを見せてくれた。  映し出されていたのは、コンビニか何かのレシートの一部だった。 「なに、これ」 「このへんよく見て」  彼の指先が示した部分を見て、わたしは笑いそうになった。  ポイントカードのポイントが、二万円分たまっている。 『すごいたまった。 ハッピー。 ずっと何に使おうか考えてる。』 「兄貴クラスになるとたぶん時給で二万円ぐらい貰ってテレビに出てるんじゃないかと思うんだけど……」 「これを、午前二時に……寝ればいいのに」 「何を考えて生きてるんだろ、と思ったら俺もなんか止まらなくなった」 「あんたもお兄さんも幸せな人ねえ」 「日常の小さなことに喜びを見出して生きてるっぽくて弟として嬉しいわ。俺はポイ活は消費者を特定のチェーン店に拘束する悪だと思っていたけど、今度兄貴と買い物に行く時は兄貴のカードを出してあげようと思った」  なんか清森兄弟って感じだ。
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