Days3 飛ぶ

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Days3 飛ぶ

 わたしたちが通っている高校の教室棟の校舎は四階建てで、年寄りに配慮されているのか、一年生が最上階の四階、二年生が三階、そして三年生が一番下の二階を使うことになっている。つまりわたしたちは二階の教室を利用している。一番下と言っても、一階ではない。地面からはだいたい二、三メートルあるはずだ。  それなのに、どうしてか彼は窓から外へ飛び出していってしまう。  わたしは心臓が潰れるかと思ったのだけど、落ち着いて窓の外を見ると、彼はわずかに壁の外に張り出した二階の床の一部を足場にして器用に立っていて、するすると音を立てずに移動し、窓が開いていた空き教室の中に入っていって、なんということもなく教室棟の中に戻っていった。 「ほら、早苗、椅子に座りなさい」  定年後再雇用された六十過ぎの老教師が、なぜか彼ではなくわたしを注意する。授業中に窓から出ていった彼より、彼が気になって身を乗り出した私のほうが、罪が重いだなんて。常識的に生きることのなんと息苦しいことか。 「先生、清森のやつ、いいんすか」  真面目な男子生徒がそう訊ねると、教師は「止めたところで聞くやつじゃないからな」と答えた。  後ろの席の女子がわたしの背中をつつく。 「清森くん、やりたいこと全部やっちゃうタイプ?」 「そう。今気づいた? 天、ずっと机に向かっているのが苦手なの。昔からずっとそう」 「よく高校入れたね」 「わたしもそう思う。たぶん大学は行かないと思う」  内申点はずたぼろだけど、わたしが勉強を教えたから、試験の点数は異常に良かったらしいわ。というのは自分の自慢のような気がしたので言わなかった。
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