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誰もが俺を性格の悪い男だと思うだろう。性格の悪くてダサい男。中肉中背の俺を、痩せっぽっちの神経質な男だと思うだろう。
そこの女は、俺を見て、みすぼらしいと思うだろう。黒い髪は伸び放題で、前髪で前が見えない。
カラスのように俺は嫌われていた。ずる賢いと思われてた。でも、俺は飛べないからこの街から逃げ出せないでいたんだ。
午前0時。街のゴミを漁る。生ゴミはクセェからそのまま食わねぇ。売れそうなものを売って、それでコンビニで食料を得る。盗みをして捕まって、野郎だらけのムショに閉じ込められるのは、もうゴメンだ。
俺がゴミの中から見つけたのはアクセサリー。それも、白いダイヤのついたリングだった。こいつは高く売れそうだ。
鑑定所に行けば、俺の汚い服装を見た鑑定人が怪しんできた。
「……これは、あなたのではないですよね……?」
「あ?俺のだ」
「どうせ、盗んだんでしょう?警察を呼びますよ」
「おい、待て。俺が拾ったんだ。だから、俺のだ」
「だったら警察に届けてくださいよ」
「お前、話になんねぇな。他所に行くわ」
俺は、店を後にすることにした。店を出る途中に話しかけられた。
「ちょっと、待って!あなた」
着飾った綺麗な女が、俺を呼び止めた。
「……なんだよ?」
「それ、私のなの。返してくれない?」
「ほう。いいだろう。だがタダとはいかないぜ」
「いくら払えばいいの?」
女は冷静だった。
「そうだな。最低でも100万だ」
「100万でいいの?わかったわ」
「なんだよ!?これもっと高いのかよ?それともお前、金持ちか?」
「今は、お金がいくらでもあるの」
「なら、ちょうどいいわ。お前、俺を養ってくれよ」
女は怪訝そうな顔をした。
「何?あんた、そんな汚い格好のくせにそんなこと言って……」
俺たちは、人混みを離れてカフェに行った。フラペチーノなんて初めて飲んだ。こんなに甘くて美味いもの飲んだことなかった。
「これ、私の元彼からもらったの」
「元彼の話やめろよ」
「なんでよ?あんた私のなんなの?」
「なんか嫌だろ」
「なんか、あんた勘違いしてない?」
「まあ、いいだろ。続けろ」
「元彼はさ、若かったけどIT企業で社長をしていたの」
「へー、金持ちじゃん」
「でもね、倒産して、破産して自殺したの」
「……」
「彼は、差し押さえられる前に、このダイヤのリングを私にくれたんだ」
「はぁ……形見ってわけね」
俺は、この女に横取りされる前に、この指輪を左手の小指にはめた。
「そうね。見つけてくれてありがとう。それは彼の最高傑作よ」
「は?」
「人間を壊す研究をしていた彼の最高傑作、黒く光る指輪」
彼女がそう言った時には遅かった。俺は、もうこの指輪を外せなくなっていた。
「おい!なんだよ!?これは……外せねぇじゃねぇか……」
「ふふふ……慌てないで。あなたの血を吸ってるから」
指輪がトゲトゲとしてきて、指に突き刺さり、どんどん血が抜かれていく……血がリングに集まっていき、ダイヤが赤く、次第に黒く染まっていった……
「愚かね。もう血も流せないでしょ。不潔な干からびたドブネズミくん」
俺が、倒れながら見上げた女は、不潔な俺とは住む世界が違かった。彼女は、まるで、ネズミを狩る猫のように残酷な微笑みを浮かべていた。
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