令和式部日記

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「見て見て、やば~いっ。」 そしてそれは学校でも一緒。クラスの友達が、オタクの子たちを指さして笑ってる。 「なんかさー、漫画読むのは別にいいと思うんだけど、自分で絵描いてるのはキモくない?」 「わかる!てか授業中にコソコソ絵描いて、先生に見つかった瞬間慌てて隠す子ってバカなん?」 「今描くなよって感じするよね~。てか描いてる絵キショくね??」 「まーまー、言ってやるな、授業中も我慢できないのよ、そうやってオナってんのよ、」 「きっっっっっっも!!!!!!!」 馬鹿にするなよ。そういう絵を描いてる人たちがSNSでは神絵師だったりするんだよ、そして将来面白い漫画を描く人になったりするんだよ。 …なんて言えるわけないから、私はやっぱりここでも愛想笑いをするしかない。SNSやオシャレ大好きな母のプロデュースの元、見た目だけはいっちょ前に一軍になってる私。 だけど、心がついていかない。 「光もそう思うでしょ?あ、やば聞こえてたかな、こっち見た!」 オタクさん達が迷惑そうにこっちを見てきて、でもそれさえも友達はウケるらしい。クスクス笑って、オタク達を悠々を睨みつけている。 私はというと、やっぱり笑っていた。 「意気地なしだ…」 休み時間。 女子トイレの鏡の前で私がボソッと呟いた。 意気地なし、意気地なし。「好き」って言えない、「キモくないよ」って言えない、言えない、言えない、全部言えない。好きなものを「恥ずかしい」と思うのは、とても苦しい。 ゆっくり顔を上げると、見た目だけ一軍に仕立て上げられたショートボブの私が、陰険な目つきで自分を見つめ返していた。…うん? 鏡の奥が黒く渦巻いている。 なんだこれ、キモ。 え、やだな、ちょっとこれキモいし怪しいし、逃げた方が…なんて色々考えてる間に、鏡からニョッキリとどう見ても人間のものには見えない筋骨隆々の青黒い手が伸びてきた。 「や、ちょ、ぎゃーーーーーーーっっ!!!」 その手にガッチリとからめとられた私。 無理無理無理、私こういう展開求めてない、怖い怖い怖い怖い!!! 「無理いぃぃぃぃぃいいいいい!!助けっ、うおっ、待って鏡!?鏡の中に引きずり込むの!?いや゛ぁぁあああああ゛!!!ぐぐぐぐぐぎぎぎぎ!!!」 なんとか引きずり込まれまいと、体半分鏡に入った状態で全力の抵抗を見せる私。 引きずり込まれてなるものか、てか待って、引きずり込まれたら最後私死ぬんじ「あああああああああああ゛!!!!!」 呆気なく引きずり込まれた。
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