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鏡の中で何がどうなっていたのか分からない。
あまりにも一瞬過ぎて。
でも体がどこかに向かってとんでもない勢いで引っ張られていって、気づいたら突然床に放り出されていた。
「何何何何!!?」
放り出されてそのまま寝っ転がってる場合じゃない。速攻で体を起こして周囲を確認した。
ここどこ、何ここ、うん!!?
線香臭っ!!
あたりは薄暗くて、ようやく状況が掴めた時には自分の目の前に着物を着た人間が二人いるのが分かった。で、なんか自分の周りには変な魔方陣?みたいなのが書いてあるし、お札貼ってあるし、塩盛ってあるし、え、ここは何かの宗教施設ですか?今何かの儀式中ですか??
「あの、ここは…」
私がこういうと、二人の男のうち一人が尊大な態度で口を開いた。
「晴明よ、成功したということでいいのだな?」
「仰せの通りでございます。ここに召喚した者こそ、道長様の切り札となりましょう。」
待って、私を無視して話を進めないで。あと晴明?道長?どういうこと?え、そういう役になり切ってるの?そちら様は脳みそだけタイムスリップしてる感じなの??
「あ、あの!!」
強めに声を出すと、二人がいっぺんにこっちを向いた。
「晴明よ、こやつは儂に危害を加えるような物ではないのだな?」
「問題ないかと。」
おい、私を猛獣みたいに言うな、私だってここにいるのは不本意なんだぞ、ふざけんな。
ていうかだから!!!
「ここはどこなんですか!!いきなり鏡の中に引きずり込まれたんですけど!!」
「騒々しいやつめ。勝手にしゃべるな、お前に話す許可は与えておらぬ。」
はああああ!!?なんだこの痛クソジジイ!!私がバッと立ち上がって道長(仮)を見下ろすと、それと同時に晴明(仮)も立ちあ上がって、私の体をいきなり床板に押し付けた。
「いだだだだだだ」
「晴明、見事な体捌きだ。それにしても、この儂を見下ろすとはなんと不遜な。まあよい。小娘、教えてやろう。今は一条天皇の御代、そして儂はこの世の栄華のすべてを手にする者、藤原道長だ。」
藤原道長!?嘘つけ、そういうコスプレの人でしょ!?だって道長って平安時代の人だし!!
「冗談言わないで、オッサンそれ本気で言ってるなら相当頭やばいからね!?てか放して!!」
晴明(仮)の腕をなんとか振り払って、私はもつれる足で外に出ようとする。目の前には簾がかかっていて、飛び込むようにしてそこを潜った。
そして唖然とした。
目の前に広がるのは広大な庭。
それは歴史の資料集とかで見たのと同じ、平安時代の寝殿造りの庭だった。
…いやいやいやいや、本当にタイムスリップ!?
私変な青い腕に鏡の中に引きずり込まれてタイムスリップしたの!!?
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