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「光…」
怯えた様子のオタクの君。
私は鼻息荒く彼女の方を見据える。
「あんな奴の言うこと気にしなくていい!!てか何あいつ、自分の出世に繋がるとか馬鹿じゃないの??人を当てにしないと出世出来ないわけ?かっこ悪。あのジジイのために出仕するんじゃねーし!!」
「か、勝手なことをするな!!」
え?
驚く私をよそに、オタクの君はフルフルと震えながら唇を強く噛んでいて。
なんで?なんで怒ってるの?
「でも、」
「もうほっといてくれ!!」
オタクの君はこういうと、その場から逃げるように立ち去ってしまった。意味が分からない。私はオタクの君の味方をしただけなのに、なんで?
「…余計なことをなさいますこと。」
ボソリと、他の女性がささやいたのが聞こえた。
「え?」
「余所者の貴女は啖呵を切れば宜しいでしょうけど、お方様にとって、先ほどの方はこれからもお付き合いのあるお人。お方様は夫を亡くされ、お一人で娘も育てていかねばならぬ身ですのよ。
後ろ盾となって下さる方は多いに越したことはござませんのに、それをあなたときたら勝手に突き放して。お方様がお怒りになるのも無理ありませんわ。あーあ、貴女のせいでこれからの暮らしが困窮したらどうしましょう。」
えっ、オタクの君って未亡人だったの?
ていうか娘もいたの!?
いや、そうじゃない。
私、なんてことを……!!
そのあと、すぐにオタクの君に謝ろうとした。だけど、オタクの君は塗籠っていう小部屋に籠城していて、会うこともできなかった。
…眠れない。
夜、寝床に入った私は今日のことが気になりすぎて全く眠くならなかった。だって、オタクの君ってシングルマザーってことでしょ?それで、今日のあの失礼な野郎はオタクの君を援助してくれるかもしれない人で、私はその人を怒らせてしまったわけで、そんなのオタクの君がキレるのも当然だ。
どうしよう、どうしたらいいのかな。
あの男のところへ謝りにいけばいいのかな…
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