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ギィッと、床板が軋む不穏な音がした。
「え、誰?オタクの君?」
「昼間、貴女に恥をかかされた者ですよ。」
…!!!?
ずっしりと、自分の体に誰かがのし掛かってきたのが分かった。生暖かい吐息が顔にかかって、瞬時に理解した。
平安時代と言えば、夜這い。
私、誰かに夜這いされてる!?
「だ、だれかっ、」
「おっと、お静かに。」
この声、オタクの君の親戚の男…!?
私が目を見開いて確認すると、まさしく昼間真っ赤になってキレていた男が、下卑た笑みを浮かべて私を見下ろしていた。
「お前!!」
「相変わらず威勢のよろしいことで。貧相な体つきで髪も短く、到底美しいとは言い難い貴女ですが…その生意気な唇が、閨ではどんなにはしたなく甘い声を漏らすのかふと興味が湧き、こうしてわざわざ忍んで参ったのですよ。」
まって、言葉のひとつひとつにウザさとキモさが捻じ込まれている。意訳すると「ブスだけどヤッてみたい★」ってことだよね、舐めてんの??
「放せ、この変態ーーーーーーっ!!!!!」
ざけんな、平安貴族ーーーーーっっ!!!
意味わかんない風習で恋愛してんじゃねーよ、令和なら即アウトな方法だぞ、キモイいいいいいいいい!!!!
大暴れする私を親戚の男は四苦八苦しながら取り押さえようとして、それを必死の腕力で私が振り払って、さながらプロレス状態。だけど最後はやっぱり力負けして、私が男に組み敷かれてしまった。
「やっと捕まえたぞ、この芋女!!」
烏帽子も吹っ飛ぶほどの大乱闘で、男は汗びっしょりで息も絶え絶え。でも勝ち誇った様子で私を見下ろす。嘘でしょ??私、こんな感じで男と致すの??悲劇すぎない??
「は、はなせえええええええええ!!!」
渾身の力で叫んだ。
でももう、誰かが来るなんて期待してなかった。最悪だ、強制的にタイムスリップさせられて、乙女の純情(?)をこんな形で散らされるなんて…!!
「やめて!!その子に手をだすな!!」
耳を疑った。
だって、都合よく人が現れたから。
そしてそれが、塗籠に籠城してたはずのオタクの君だったから。
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