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「うわ!机に座ってると思ったら、またそんなモノ描いてるの~?気持ちわる~いっ。それじゃまるでオタクじゃない、ママそういうのヤダ~!」
えーえー、どーせ私の性根はキモオタですよ。
背後から忍び寄って勝手に私の手元とノートを見てきた母の方を振り返りながら私は顔を顰めた。
そんな私を見て、母は心底気持ち悪そうに苦々しい表情をする。
「光の友達で未だに絵描いてる子なんかいないでしょ??恥ずかしいからやめてって言ってるじゃん、そんな幼稚な絵描くの~。それよりほら、ママのイソスタ見て!光の今日のお弁当アップしたら、たくさんコメント貰えたのよ!」
母は私のために作った弁当の写真をSNSにアップして、みんなから「豪華!」とか「おいしそう!」とか「娘さんが羨ましい~!」とか言われて自分の承認欲求を満たすのに夢中。私とは人種が違う。
私、源 光。
こんな母と暮らしてるおかげで「漫画やイラストを描く事は恥ずかしいことなんだ」って人一倍意識してる高校2年生。こうして隠れてコソコソ描いて、時々母に見つかって、そのたびに確実に羞恥心を植え付けられていく。
言えない。
「私はこういうことが好きなんだから、口出ししないで。」なんて。
だって、母のあの顔、声、視線。
私は「すごいね、よかったじゃん。ママ料理上手だもんね。」と母の求めているであろう言葉だけを吐き捨てて、さっきまでノートに描いてたオリキャラのイラストのページをビリッと破いた。
それに、知ってるよ。私の絵、別に上手じゃないってことくらい。だから余計に恥ずかしさが募る。
嬉しそうにイソスタの写真をスクロールする母の隣で、私は愛想笑いを浮かべることしかできなかった。
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