令和式部日記

2/17

32人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「うわ!机に座ってると思ったら、またそんなモノ描いてるの~?気持ちわる~いっ。それじゃまるでオタクじゃない、ママそういうのヤダ~!」 えーえー、どーせ私の性根はキモオタですよ。 背後から忍び寄って勝手に私の手元とノートを見てきた母の方を振り返りながら私は顔を顰めた。 そんな私を見て、母は心底気持ち悪そうに苦々しい表情をする。 「光の友達で未だに絵描いてる子なんかいないでしょ??恥ずかしいからやめてって言ってるじゃん、そんな幼稚な絵描くの~。それよりほら、ママのイソスタ見て!光の今日のお弁当アップしたら、たくさんコメント貰えたのよ!」 母は私のために作った弁当の写真をSNSにアップして、みんなから「豪華!」とか「おいしそう!」とか「娘さんが羨ましい~!」とか言われて自分の承認欲求を満たすのに夢中。私とは人種が違う。 私、(みなもと) (ひかる)。 こんな母と暮らしてるおかげで「漫画やイラストを描く事は恥ずかしいことなんだ」って人一倍意識してる高校2年生。こうして隠れてコソコソ描いて、時々母に見つかって、そのたびに確実に羞恥心を植え付けられていく。 言えない。 「私はこういうことが好きなんだから、口出ししないで。」なんて。 だって、母のあの顔、声、視線。 私は「すごいね、よかったじゃん。ママ料理上手だもんね。」と母の求めているであろう言葉だけを吐き捨てて、さっきまでノートに描いてたオリキャラのイラストのページをビリッと破いた。 それに、知ってるよ。私の絵、別に上手じゃないってことくらい。だから余計に恥ずかしさが募る。 嬉しそうにイソスタの写真をスクロールする母の隣で、私は愛想笑いを浮かべることしかできなかった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加