令和式部日記

7/17

31人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「あの、」 「ど、どうかお許しくださいぃぃぃ、ほんとにマジで宮仕えとか無理なんです、そんなキラキラしたところに行ったら確実に溶けて死ぬんです、マジ無理、南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏…!」 …なんだこの女。 その女性が落ち着くまで、暫くかかった。まず私の姿を見て念仏を唱えるのをなかなかやめないし、私がちょっとでも声をかけると悲鳴を上げて白目剥くし、そうかと思ったら「私はどうせ根暗ブス、私はどうせ根暗ブス、」って復唱し始めるし、控えに言ってメンタル終わってる。 「だーかーら!!私は盗賊とかでもないし、貴女に危害は加えませんから!!落ち着いて!」って30回くらい言って、ようやく女性は大人しくなった。でも警戒心がすごい。 「初めまして。私、(みなもと) (ひかる)です。」 「(みなもと)…?嘘だ、そんな卑猥な格好して源氏を名乗るとか舐めてんのか。いくら私が引きこもりオタクでも源という姓は皇族が臣籍降下した時の由緒正しい姓だって分かってるんだからな、バ、馬鹿にすんなよ!」 「はあ??言ってる意味が分かりません、」 「それはお前が馬鹿だからだよ、この時代の常識だよ!!」 女性はこういうと、昆布みたいに長い黒髪の間からギロリと私を睨みつけてきた。 「わ、私は何を言われてもこの屋敷から出ないからな!宮仕(みやづか)えなんてしない!」 「宮仕えってなんですか??」 「は??お、お前、道長様が私を宮仕えさせるために寄こしてきた女じゃないの??」 「私はあなたに道長の娘の世話係になるのを了承させるために来たんですけど?」 「それを宮仕えっていうんだよ!!宮仕え知らないとかお前どんな田舎の山奥から出てきたんだ!!」 うるさいわ、普通に生まれも育ちも超都会だわ。 私は溜息をつくと、しげしげと女性を眺めた。藤原道長もなんでこんな女を自分の娘の世話係にしたいんだろう。理由が全くわからないけど、この女を世話係にしないと、私は元の時代に帰れない。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加