お見舞い申し上げます

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午後2時になった。 この病院の、面会がOKになる時間。 「ここ、この部屋よ。トミナガって書いてある」 廊下から、やかましい声が聞こえてきた。 どうやらトミナガさんに見舞いが来たらしい。 病室に入ってきたのは中年のおばさん二人組。 「倒れたって聞いてびっくりしたわよ。大丈夫なの?」 「大丈夫?」って、聞かれて困る質問なんだよなと、私は心の中でつぶやく。 大丈夫じゃないから入院している、だけど大丈夫だから面会ができる。 何と答えていいのか、いつも迷う。 あと、あまりに何回も聞かれ過ぎて、うんざりしている質問でもある。 トミナガさんが答える前に、おばさんが更にたずねた。 「ところで、私が誰だか分かる?」 「分かるよ。ニシザキさんでしょ」 「良かった〜。会うのは久しぶりな上に、頭を打ったって聞いてたから」 「じゃあ、私は誰か分かる?」 話し声が変わった。 「ミナミさんでしょ」 「しっかりしてるじゃない。安心したわ〜」 テンションが上がったおばさん二人は、それからキャッキャとはしゃぎ、二人で散々しゃべった後に帰って行った。
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