お見舞い申し上げます

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コンコンコン。 ドアをノックする音が聞こえる。 開けっぱなしのドアをわざわざノックして入ってくるなんて、丁寧な人だな。 「失礼します」 頭を下げてから、落ち着いた雰囲気のご婦人が入ってきた。 はじめて見る人だと思ったら、案の定、トミナガさんのベッドの前へ行く。 お見舞いに来る人は大体いつも一緒なので、向かいの二人のどちらかのお客さんなら、顔を知っている。 「ご無沙汰しております。あ、私のことは覚えていらっしゃいますでしょうか?」 「キタハラさんよね」 トミナガさんのしゃがれた声が聞こえた。 長居をするとトミナガさんがゆっくり休めないだろうと、キタハラさんは見舞いの言葉を短く述べ、見舞いの品を渡すと、サクっと病室から出て行った。 部屋を出る時には「皆さま、お休みの所、お邪魔いたしました」と、私たちにも丁寧にご挨拶をしてくださった。
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