透哉「ただの箱」

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透哉「ただの箱」

「住民税ってマンションの?」  透哉が訊き返した言葉が可笑(おか)しかったらしい。  黒猫を抱いた奈々が笑う。 「違うよ。住民税は、住民票のある区から請求が来るの。マンションには払わない」 「ふうん」    三十過ぎまで夜職をふらふらして、他人の住居にあちこち転がり込んでいる透哉にはなんだかよくわからない。 「未払いだと口座差し押さえられたりするよ。透哉の住民票はどこ?」 「わからない。生まれて育ったのは三鷹市」 「動かしてないならそこかな。今度市役所に行って聞いてみたら」 「──うん」    三鷹の育った家。  ぼろぼろの平屋。  父親は最初からいなくって。  母親は男作って出て行って。  姉も彼氏の家へ出て行って。    水道光熱費が未払いで止まって、もはや家というよりただの箱だった。  雨風凌げるただの箱。    家賃も未払いだったろうに裏の大家は透哉を追い出さなかった。  ときには食べ物をくれてお風呂も使わせてくれたりもした。    中学生の頃だから、もう十五年以上は経つ。  大家の女性は当時で既にかなり高齢だったと思う。    ──生きているのかな。    役所は気が進まないが、あの大家のことは気になった。    ここの部屋主は真面目だ。  風俗嬢だが自炊もちゃんとして、部屋も整頓され、税金も払う。  近頃は、透哉と猫の面倒もみる。  奈々の腕の中でくつろぐしなやかな雄の黒猫。  猫の名前は透哉には秘密だそうだ。    ※ ※ ※    新宿の事務所に出勤して透哉は驚いた。 「え、三桁?」  私用で早めにあがる、と上司に伝えに行ったら思いがけない話が舞い込んで。 「僕、三十過ぎたのに。その人解ってるのかな。若いほうがいいんじゃないの」    透哉を一晩貸切にしたいと申し出ている人がいるらしい。    透哉は今、躰を売って暮らしているわけではない。女の子に声をかけて水商売を斡旋するスカウトをしている。性格上続くかわからないが。    かといって全く潔白かというと、上司から取引先との接待を頼まれることはある。さらに高額を示されれば別に売りをしないこともない。    ──それにしても一晩で三桁。   「まあ、伝えたよ。ちゃんと年齢。お前が俺に詐称してなければ」 「してないよ。何の得があるのそれ」  透哉は可笑しくて笑う。  すぐ、まあって言うのが口癖の面倒見の良い上司。   「僕、会ったことある人?」  透哉が訊く。 「先週、池袋の飲み屋で見かけたって。なんか、まあ、そこの店長経由でこっちまで話がきた」    ──外見だけで三桁。    そんな価値あるのかな。  原価はほぼ(ぜろ)だ。  整形もしていない。  化粧もしていない。  なんならスキンケアもしていない。  髪も知り合いに適当に切ってもらうし、服もこだわりはない。  それでも綺麗だ美人だと他人は言う。  髪も瞳も肌も色素が薄い。  父親は不明だが、おそらく西洋の血が混じっている。   「まあ、気が向いたら連絡ほしいって。身元は確かだね。何十年もタイと日本を行き来している経営者の人。マレーシアとかも行ってた。結構歳だね。五十代かな」 「若い子すきそうな経歴なのに。変なの」 「まあなあ。外人顔が好きなのかな。お前ハーフっぽい見た目だし。まあ、後で預かってる相手の写真データ送っとくよ」 「うん。ありがとう」   「午後からいないのな。了解。まあ、適当にやって勝手に帰れ」 「ありがとう」  事務所を後にしようとすると呼びとめられた。   「透哉」 「ん」 「まあ──別に、これは、いつもの接待ではないから。断ってもこっちは何の義理とかもないから」 「うん」  気づかいがうれしくて透哉は笑う。   「さっさと行きな。もうすぐ親父が透析から帰ってくるから。またべたべた触られるぞ」 「うん。ありがとう」    真面目な上司。この会社の二代目だ。  上司なのに一番に出社して事務所のポットのお湯を沸かす。皆のために。  遅刻ばかりの透哉とは全然違う。ちゃんとしている。    育った家には時計がなかった。  母親も歳の離れた姉も、まともに働くどころか生活自体が滅茶苦茶だった。  時間の概念がない。お腹がすいたら食べる。眠くなったら寝る。  学校に行く時間が解らないでいたら、途中から先生が迎えに来てくれるようになった。    世間の皆が、当たり前のように時間通りに起きて身支度を整え仕事に行く。透哉にはそれがとてもむずかしいことに感じられる。   「そうだ、透哉、あと」 「うん」 「まあ、お前のこと、後をつけてる女いるっぽくて。それも一応データ送っとくから」 「え」 「まあ、刺されるなよ」  上司は冗談めかして笑ったけれど。 「──うん」  なんだろう。物騒だ。  最近はとても地味に暮らしているのにストーカーだろうか。    ※ ※ ※    事務所をでて少し歩くと新宿駅の東口に着く。  透哉は、駅前で携帯をいじっているマスクをした女の子に声をかけた。 「マスク逆だよ?」  マスクを外させて顔を見る常套句(じょうとうく)。  女の子は引っかからなかった。前に誰かに同じことをされたのだろう。  でも、顔が見たいのだ、と察して、ちょっと笑ってマスクを下げてくれた。優しい子だな、と思った。  顔は平均点くらい。素直で、おとなしそうな感じ。  透哉の姿をじっと見ると「私、お金無いんで」と言った。  外見からホストの客引きと間違えられたらしい。 「いや、稼がせるほうなんだけど──」  そこまで言ったとき少しだけ寒気がした。手も僅かに震えるような感覚がある。朝から何も食べていないから低血糖の症状だろう。  透哉にはめずらしいことではない。 「──少しサボろうかな」  この優しい子とお昼を食べたくなった。 「おごるからご飯だけつきあって。一人で飯食うの苦手なんだよね」  後半は本音だ。 「今どき、女の子だっておひとり様で自由に食べ歩いてるのに。変なの」  素直な意見につられて、透哉も本心で返した。 「箸を使うのが上手くなくて。一人だと他人の視線が気になっちゃうんだ」  相手の感想は今までにないものだった。 「あ、もしかしてと思ったけど、外人さんなんですか」  透哉は可笑しくて声をたてて笑ってしまった。  素直すぎて。  女の子に悪いと思ったが暫くとまらなかった。    透哉が箸を上手く使えないのは、そもそも親もまともな躾を受けてないような家で育ったからだ。  左利きなのも同じような理由だろう。  長じても直らなくて一人で外食していると周りが気になって嫌だったけど。  今度からは少し開き直ろうか。    透哉はちょっと楽しくなって女の子の指先を捕まえて駅ビルの上階にある明るいレストランに入った。    「なんでも頼んでいいよ。ありがとうね」    ありがとう、には、自分のコンプレックスを和らげてくれた感謝も込めた。   「名前、聞いてなかった。僕、透哉」 「加奈江、です」 「酒飲める子?」 「──十九歳なので」  断る仕草をする。 「真面目だなあ」    注文をとった店員が去ると加奈江が訊いてきた。 「本当にホストじゃないんですか」 「やったことあるけどすぐ辞めちゃった。さっきはスカウトで声かけたの。水商売しませんかって声かけて、お店に紹介するとお金がもらえるの。知らない?」 「聞いたことはあります」 「敬語だよね。真面目だなあ」   ※ ※ ※    加奈江は、さっきから自分を真面目だと評する透哉の言い方にいやな感じは受けなかった。    馬鹿にしているわけではなく感心している。  それは仕事中にフルーツをつまみながらワイン飲んでるこの人は真面目ではないだろう、と思う。    普段、加奈江は誘われてもついて行くことはまずないのだが、この男の人はどこかで見たような気がして断れなかった。    ──気のせいだろうか。    モデルみたいな外見。  ホストもやってたというし、そういう雑誌で見たのかもしれない。    加奈江は、なんだか綺麗な人と一緒いると思うと意識してしまって周りの目が気になった。  釣り合ってないとか思われてそうで。  自分の髪とか顔とか大丈夫かなと不安になって化粧室に立って。鏡で確認して戻るときに解った。    ──あ。    遠目で全身を見たらわかってしまった。手足長いな、スタイル良いなって思ったら。    ──この人、昔、由宇くんと一緒に翠スタジオの動画で踊ってた人だ。    さっき教えてもらった名前。  ──透哉。  そうだ、そんな名前だった。動画のテロップはひらがなで「とうや」だった。間違いない。  あなたを知ってますって言ったほうが良いだろうか。  由宇くんの知り合いだって伝えたほうが良いだろうか。    考え込んでしまった加奈江をよそに、透哉はリラックスして酒を飲んでいる。  本当にこの人にとってはただ食べてる間、人がいてくれれば誰だっていいのだろう。 「一応訊いとくけど水商売は考えられない人?」 「学生なので」 「学生でやってる子いっぱいいるよ」  加奈江は、ふと、自分の価値を客観的に聞いてみたいと思った。 「──私、男の人に好かれるような容姿をしてるでしょうか」  ちょっと面白そうに笑われた。 「あんまりそういう聞きかた、されたことないなあ。僕、個人的には加奈江ちゃん好きだけど。仕事上で容姿だけ評価するなら真ん中よりちょっと上、かな。一般店いけると思うよ。高級店は面接で落ちるかも。挑戦してみて、気に入られたらもしかして、くらいかな」 「そうなんですね。今はお金に困ってるわけではないので、興味本位で訊きました、ごめんなさい」  また笑われる。よく笑う人。馬鹿にされている感じはしないけれど。 「謝らなくても。僕も飯の人数合わせに付き合ってもらっただけだし気にしないでよ。本当に真面目な子だね。道踏み外さないようにね」  スカウトしようとした人に言われたくはない。 「気が変わったら連絡して」  お店のナプキンに連絡先を書いているのを見て、左利きが似合うなと思った。   「名刺とかないんですか」 「違法だから。そんなの配ってたら捕まっちゃうよ」  また笑われた。本当によく笑う。綺麗な笑顔。 「一緒に食事してても、一緒に逮捕されたりしないから大丈夫」  いくつくらいなんだろう。年上なのは間違いないけど見当がつきにくい。  長めの髪とか、細い骨っぽいところとか、黙った横顔のちょっと寂しい感じが由宇くんを思い出す。   「──あの」 「うん」 「もう少しだけ、話せますか」    硬い声になってしまった。  透哉は怪訝な顔をしている。   「うん。どうぞ」 「あの、黙ってるのも気が引けてって言うか、前に懲りたことがあるので、あの、ええと」 「うん」  一気に言った。 「私、中学生のときに、透哉さんを翠スタジオの動画で見たことがあります。一緒に出てた由宇くんとはその後、偶然高校が同じで、二年生ではクラスも一緒でした──さっき声をかけられた時は解らなくて、途中で気がつきました」  ──そういうことか。    透哉は、どう返そうか迷った。  違法なことに手を出してから動画に出るのをやめている。捕まった場合に迷惑をかけるから。  この子が中学に入ってすぐなら、まだぎりぎり出ている頃か。計算は合う。    ──でも。    言いにくそうにしてたから、何かあるんだろう。別に動画で知ってます、だけなら気軽に言えるはずだ。   「──もしかして由宇が何か迷惑をかけてたら、ごめんね。ちょっと変わっている子だから心配」    透哉に謝られて、今度は加奈江のほうが、どこまで話したものか迷った。    ※ ※ ※    加奈江は、高校を卒業して、今は美容専門学校に通っている。  七年ほど前の中学生の時、偶々(たまたま)見かけた動画で由宇を知った。  翠スタジオの公演を撮ったもので可愛くて目を引いた。何十人と出ていたけど、気に入った由宇のところばかり何度も見た。    探すと他にも練習風景の動画があって他の子と笑っているところも見た。    先生も生徒も、渾名のように簡単なひらがなのテロップがつけられていた。  ──ゆう。  最初、男女どちらか解らなかった。  けれど、過去の動画で、ある程度、体のラインの出る衣装で踊っていたのを見てやっと解った。     そのダンス教室は吉祥寺だったので、加奈江の家から近いし、生徒として通えば会えるのだろうけど、そこまでの行動はできずにいた。     でも、イベントとか、レッスン風景とかの動画があがるたび姿を探した。ちょっとでも出てるとよろこんだ。    一度だけ、一時間程度のイベントを見に行った。  渋谷のショッピングモール内にある吹き抜けのイベント会場。いくつかのダンス教室が順番に宣伝を兼ねて踊る。無料だった。    思ったより近くで見れて、やっぱり可愛いと思った。  それで終わりにしよう、また動画を楽しみにする日常に戻ろうと思ったら、入学した高校が偶然にも一緒で物凄くうれしかった。  この近所で「頭は良いけど私立に行くお金がない場合は定番だよね」という高校。  公立しか認めないと言った親に感謝した。  帰国子女であることや英語ができることは、女の子同士の噂で回ってきた。  でも、ダンスのことは、本人が隠しているのか、自分以外に知ってる人がいなさそうだったので加奈江は黙っていた。  時々新しい動画にも出ているのに誰も気づいていない。  どれも何百万とか再生されている動画ではないけれど、ダンスをやってる人なら知っている、有名なスタジオのようなのに。  テレビで見る子が動画に出ていることもあったし、逆にテレビで翠スタジオが取材されていることもあった。    踊り終わった後、音楽が終わるまで、ポーズを取ったまま止まるときがある。  由宇の息が上がって肩が上下している場面が一番すきだった。   由宇は、学校では静かで大人しくて、あんなに激しく躰を使うことはない。何でも適当にさらっとこなしている。  カメラを一瞬睨みつけるようなきつい顔をするようなこともない。    顔は可愛いし頭も良いし運動もできる。女の子から声は掛かると思う。でも彼女はいないようだった。  一人でいる時が多い。少し同級生と距離を置いている感じがした。    だめでも、すぐ受験に入って忘れられるだろうという消極的な理由で、高二の終わり頃、呼び止めて、仲良くして欲しいと言ったらあっさり承諾された。    受身なのか、どうでも良いのか。  訊けば連絡先を教えてはくれる。  ファミレスに行きたいといえば一緒に来てはくれる。   長居はしないけれど。  お金はあまり持ってないみたいだったから加奈江が出した。    間近で顔を見れるだけでも嬉しかったけど、ある時、欲が出た。躰の関係になれば自分にもっと興味を持ってくれるのではないだろうか。    親が共働きだったから、学校の早く終わった平日、由宇を呼び出した。    「ええと、あのね──」  自室のベッドの上で、うまく誘えなかった。そんなことしたことがない。  由宇は、少し考えて軽くくちづけをして。そのまま手順通りに進められた。  加奈江は途中で解った。知っていることを実践して試している。ただの練習台。きっと私に関心がない。もしくは女性に。人間に。    でも、終わったとき、少し息が乱れている由宇を見たらそれでも良いと思った。  好きだった踊った後のような姿がうれしい。    玄関まで見送った時、ドアが閉められる直前に由宇に言われた。 「一昨年のイベント見に来てた子だよね」  頭から冷水を浴びせられた気がした。  ストーカーだろ、と暗に言われたようで。  何も言い訳はできなかった。  ※ ※ ※    加奈江が話すのを躊躇(ためら)っている様子を見て、透哉は、もう一度謝った。 「ちょっと変わってるところあるから。本当に何かやらかしてたらごめんね」 「いえ、私が──悪かったんです。高校が一緒だったのは本当に偶然ですけど、私は、自分が由宇くんを知っていたことを隠して仲良くなりました」  学校で孤立してそうだと思ってたから、同級生と仲良くしていたという話に透哉は驚いた。   「でも、由宇くんのほうは気づいていたんです。最後に会ったとき言われました。一字一句覚えてます──一昨年のイベント見に来てた子だよね、って。私、ストーカーだろって言われた気がして──めげちゃって。それ以来、会ってないです」  めげちゃって──と、おどけた言いかたをしたが、実際は傷ついたんだろう。  ストーカーという単語に、今朝事務所で、刺されるなよ、と言われたことを思い出す。  結局、透哉は三度(みたび)謝った。 「客席って結構、舞台上から見えるんだよね。由宇はやたら記憶力良いし──にしても言いかたが悪いな。いやな思いさせてごめんね」 「懲りたので、今回、透哉さんには最初から言いました」  そう言って加奈江は微笑んだ。   「付き合ってた、の? 言いにくからったら良いのだけど──」 「私が、一方的に、仲良くなりたいって言って、あちこち連れ回して、無理させちゃったんです──きっと。向こうは何とも思ってなかった。ずっと受け身で。話しかけないと会話も続かない感じでした」 「うん」  それは想像がつく。 「もし、由宇くんに会っても、私のことは言わないでください。最後、ああ言われて気まずいですし」 「ちょっと怒っておこうかと思ったけど──加奈江ちゃんがそういうなら」  加奈江は再び「私が悪かったんです」と言って笑った。    その時、地震が来た。    駅ビルの上のほうの階だったので揺れが大きく感じられる。  ゆらゆらと長い時間振り回されて透哉は気分が悪くなり加奈江にさらに謝って、しばらくテーブルに伏せっていた。  酒のせいもあるかもしれない。  店員が新しいおしぼりと水のお代わりを持ってきてくれた。    ※ ※ ※    回復した透哉は新宿駅から十番線の電車に乗って吉祥寺で降りた。  三鷹市役所までのんびり歩こうかと思っている。  大家は生きているだろうか。  自分を見てわかるだろうか。    バスで行くのが早そうだったがガソリンの臭いが苦手で諦めた。ただでさえ、酒と地震で酔った後なのに。    井の頭公園へ向かう広い階段を、昔からある焼き鳥屋を右手に降りて行く。    この辺りはまだ武蔵野市で、公園内の大きな池に架かる橋を渡らないと三鷹市には辿(たど)りつけない。    なのに、橋の途中で脚が竦んで動けなくなった。    ──池の黒い水面が穴のように思える。  子供の頃の記憶が足元にぱっくりと巨大な穴になって広がっているような錯覚に囚われる。  揶揄(からか)われて苛められてひもじくて惨めで。  普段は忘れられているはずなのに。    目眩がする。  ──もう、別に、今ストーカーがいるなら刺してくれても構わないのにな。    結局、透哉は、ふらつく足取りで駅に逆戻りした。  井の頭線に乗り、奈々のマンションに何とか辿りつくことはできたが、玄関を入ってすぐに力尽きて横たわる。  もう少しなのに部屋まで行く気力がない。  冷たい廊下が気持ち良い。  黒猫が出迎える。  部屋主は店に出勤したか。    真っ黒な毛並みを撫でていると気持ちが落ち着いてきた。   「ただいま、ルイ」    奈々が付ける猫の名前くらい予想はついている。  たぶん、あいつのほうはとっくに彼女の名前すら思い出せないのに。    了
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