合鍵

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合鍵

 哉太は同じ大学の一年先輩だった。でも学部は違う。  彼は一級建築士を目指して、私は管理栄養士になるために学んでいた。  アパートの近くのコンビニでバイトをしていたらしい。私は覚えていなかったけど……。  彼は私のアパートから歩いて十分程の所に住んでいた。  コンビニで買い物する私を見かけて 「一目惚れだった」と哉太は言った。  それから付き合い始めて四年。  彼は卒業して建築設計事務所に勤め始め、一年後、私は管理栄養士として今の会社に就職した。  花火大会も勿論だけど哉太のアパートが近いせいもあって通勤には少し不便でも私は引っ越しは考えなかった。  半年前……。  静岡の実家から、みかんをたくさん送って来て柑橘類好きな哉太に持って行ってあげようと出勤前に哉太のアパートに寄った。  お互い合鍵を持っている仲だったから驚かそうと思って、鍵を開けて中に入った。 「哉太」と声を掛けた。返事は無い。  もしかしてまだ眠っているとしたら遅刻するといけない。そう思って奥の寝室に行った。  そこで哉太のベッドに女性が眠っているのを見てしまった……。  昨夜は飲み会だとメールをくれていた。  酔った勢いで……? 何で……?  目眩がして倒れそうだったけど……。  キッチンのテーブルにみかんを置いて玄関に行くと、そこには黒のパンプス。  さっきは気付かなかった……。  鍵をかけて、そのまま出勤した。  会社に着いて仕事を始めても……手につかない。  でも哉太は、あの部屋には居なかった。すでに出勤した後? それとも昨夜は帰ってない?  どちらにしても、あの女性は誰?  哉太からはメールも電話もない。  仕事の時間中には、お互いいつもしないけれど……。  哉太は今朝、私がアパートに行ったことは知らない。帰ったらテーブルのみかんで気付くだろうけど……。  仕事が終わって帰り道、学生時代に哉太がバイトしていたコンビニに、なんとなく入って買い物。  今夜は何も作る気がしない。お弁当とチーズケーキを買って帰る。哉太の好きなレアチーズケーキ。
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