1.腹黒いシンデレラ

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1.腹黒いシンデレラ

「さあ、今夜も始まりました! 悩める子羊たちを軽ーいノリで導く、『世界異世界どこでもお悩み相談室ラジオ』! 司会は今日も僕、リッキーが務めさせて頂きます!」  とある異世界のラジオ局。  軽快な口調で、パーソナリティーの男がマイクに向かって元気に叫ぶ。  タイトルコールを終えて雑談をいくつか適当に話すと、彼はキリをつけて手紙を取り出した。 「さて、今夜は面白そうな相談が来てますよ~。R.N.(ラジオネーム)悩める魔法使いさんより。『シンデレラが舞踏会へ行っても王子と恋に落ちなかったんですが、どうしたらいいですか?』」  男は顎を触りながら、「んんー」と神妙に唸る。 「なるほどー。今日はあの有名童話『シンデレラ』の世界の方からの相談のようです。てかシンデレラが王子と恋に落ちなかったら話変わっちゃうじゃん! 結構やばい状況ですねー。こんなとこで相談してて大丈夫?」  スタジオにいるスタッフが声を上げて笑う。  マイクが拾うほど大きな声なのはわざとだ。盛り上がっているように見せるための、単なるガヤ。 「相談者は魔法使いさんかあ。シンデレラの中でもかなり重要な役ですよねえ。そりゃ焦りますわ」  パーソナリティーの前には資料のような便箋の束が置かれている。  彼は喋りながら指でそれを弾いた。 「一体なぜそんな事態になったのか、詳しく読んでいきましょうか。これ、手紙エグい量送られてきたんで、リスナーの皆さん、今日は長丁場ですよ。ご覚悟を!」  指をパチンと鳴らし、見えないリスナーたちに向かってウインクする。 「さあ、始まりはシンデレラに会いに行った時の話から──」
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