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「もしかして、あとで代金を請求するパターンですか?」
「詐欺でもないって!」
「ふふ、詐欺師は詐欺じゃないって言い張るんですよ」
シンデレラは微笑むが、その瞳は全く笑っていない。
どうしてこんなにも彼女は警戒心が強いのだろうか。
シンデレラはこんなにも疑い深い人物なのか。
神から伝えられたお告げ通りなら、舞踏会に行けると伝えると「本当!? 嬉しい、ありがとう魔法使いさん!」と手を組んで目を輝かせるはずなのに。
シゼルは自分の思い描いていた展開通りにいかず、焦りを滲ませる。
「君、シンデレラだよね? 間違ってないよね?」
「あら……名乗った覚えはありませんが」
「だから俺は魔法使いで……君を明日の舞踏会に連れて行ってあげようと……」
「ご厚意はありがたいですが、私は舞踏会に興味ありませんので。残念ですが他のお嬢さんに声をかけてください」
ぴしゃりと突き放され、シゼルは唖然とする。
彼が口をあんぐりと開けているとまた扉を閉められそうになり、ハッと我に返った。
「いやいや! 興味ないって嘘だろ!? シンデレラは舞踏会へ行きたいはずだ!」
引き下がらないシゼルに対していい加減怒ってもいいはずだが、シンデレラは気を悪くするどころか唇の端を上げて、クスクスと声を漏らした。
どうやらこの状況を面白がっているらしい。
「ふふふ、本人が行きたくないと言っているのに面白いですね。その根拠は何ですか?」
「だって……ほら、君、継母や義姉たちから虐められてるだろ? だから……」
「いいえ、別に虐められていませんよ?」
「えっ」
シンデレラは後ろを振り返り、口の横に手を添えてわざとらしく名前を呼ぶ。
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