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「なっ……!」
「そんな……」
だが、振り向いたそちら側には、バイクに原付に自転車に…二輪の化け物軍団が徒党を組んで、暴走族よろしく迫ってきている。
「こっちもダメか……」
ならばとまた踵を返そうとするが、やはり正面からはUターンした先程の廃バイクが、一つ目をギラギラと光らせて突進してくる……。
「クソっ! ここまでか……」
「イヤ! まだ死にたくない!」
最早、二人に逃げ場はなく、覚悟を極める青年に少女は抱きついて駄々を捏ねる。
……と、その時。
コーコココ…コケ…コケコッコォォォーッ…!
突然、なんの前触れもなく雄鶏の鳴き声が、声高らかに辺りへ響き渡った。
すると、二人に襲いかかろうとしていた二輪軍団がキキキーッと急ブレーキをかけて止まり、何を思ったかてんでバラバラに、あちらこちらへとまた走り出してゆく。
いや、二輪ばかりではない、廃車の化け物も、空飛ぶ化けビニール傘や靴に古着達も、みんな慌ててふためいた様子で右往左往し始めたのだ。
まるで、何かに怯えているような様子である。
「なんだ? 何が起こったんだ……?」
「に、ニワトリ……?」
なぜか助かったようであるが、安堵するよりも疑念が勝って、二人は呆然と怪訝な顔でその場に立ち尽くす。
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