ツクモガミン

12/12
前へ
/12ページ
次へ
 その後、夜が明けるとDr.アベの言っていた通り化け物は動かぬ廃棄物へと戻り、あれほどの被害があったにも関わらず、「天然ガスの噴出による集団幻覚」ということですべてが片付けられた。  テレビも新聞も動画サイトも、果てはSNSまでが集団幻覚で押し通し、実際に経験した地元民の声はフェイクニュースとして黙殺された。  いつもは都市伝説を頭から信じ、陰謀論を説くような人々までが、なぜだか今回は皆黙っていることにそこ知れぬ闇を感じる……。  しかし、こうして真実は闇へと葬られ、事件はこれで収束するかに思われたのだが、まだすべてが終わったわけではなかった……。  Dr.アベの予想に反してTKGガスはすべてが霧散せず、山中の窪地にガス溜まりを作っていたのである。  しかも、最悪な場所に……。 「──フゥ…これで全部だな……」  数日後、壊れた冷蔵庫などの電化製品をトラックに積んで来た違法業者が、ガス溜まりのできた山中の窪地へとそのゴミを捨ててゆく……以前よりこの山は不法投棄場所に使われていたのだが、林道のすぐ下にあるこの窪地もまた、まさにかっこうのゴミ捨て場だったのだ。 「さ、誰かに見られないうちに早く帰るぞ? ……おい! どうした? あれ? うつ、どこ行ったんだ?」  二人で来ていたその違法業者は、相方の姿が見えないのに気づくと辺りをキョロキョロと見回す。 「おかしいな? もしかして下へ転げ落ちたんじゃないだろうな?」  それでも見えないので心配なり、林道から窪地を見下ろして見たのだが……。 「な、なんだ!? ひいっ…」  そこには牙の生えた冷蔵庫の化け物がドアの口を開いており、長い舌を触手のようにして彼へ絡めると、彼の同僚と同じように一瞬にして飲み込んだ。              (ツクモガミン 了)
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加