2人が本棚に入れています
本棚に追加
「キャアァァァーっ…! もうやめてぇぇぇーっ…!」
先程、粗大ゴミ置き場に屯していた若者グループのギャル少女も、そうして化け物達に襲われる獲物の中にいた。
他の仲間達はすでに餌食となっており、唯一、生き残って逃げ延びた彼女も、現在、一つ目の廃バイクに追いかけ回されているのである。
「…あっ! ……痛たたたたぁ…」
執拗に追いかけ回された彼女は、ついに脚がもつれて転んでしまう。
「はっ…! きゃ、キャアァァァーっ…!」
それでも廃バイクは容赦しない。躊躇いなく溝のなくなったツルツルのタイヤで彼女を縦一文字に踏みつけようとする。
「危ないっ!」
その時、傍らから飛び出した何者かが、バイクの前から彼女を抱きかかえて脇へと避ける。危機一髪である。
「大丈夫? 怪我してない?」
「あ、ありがとう。ちょっと擦りむいただけ…ってか、あんたこそ、めっちゃ怪我してんじゃん!」
倒れた自分に手を差し伸ばすその男性を見ると、着ているスーツはボロボロに敗れ、あちこち切り傷や擦り傷だらけである。
「ああ、これね。ビニール傘のお化けに襲われたんだよ。ひどいもんだよ」
少女に答えて苦笑いを浮かべるこの人物、じつは公園で傘を捨てたあの青年だった。彼もなんとか生き延びていたのだ。
「そんなことより早く逃げなきゃ。て言っても、安全な場所なんかどこにもなさそうだけどね」
「う、うん」
辛くも一命を取り留めた少女だが、これで安心できるわけもない。通り過ぎた廃バイクはまたUターンして戻ってくるだろう。
青年は少女の手を引っ張って立ち上がらせると、一緒に反対方向へと逃げようとする。
最初のコメントを投稿しよう!