セルロイドの恋

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 あれは次の日の土曜日だった。北原は俺のために、ショートケーキを二つ買って来た。  背の高い大男がはにかむ様に、「昨日、誕生日だったんだろう? おめでとう 」と言って。  だけど、とてもじゃないが、祝って貰う気になどならなかった。  ルコの部屋に置いて来た、ケーキとリング。あれはどうなったんだろう。いくら動揺していたとはいえ、俺が犯人だという証拠を置いて来てしまったことが悔やまれた。しかし、俺の気も知らず、北原は何故か浮かれている様子だった。  そんな姿を見ていたら、この男は、本当に俺のことが好きなのかも知れないと、そう思った。    三日程過ぎたあたりで、バイトから帰って来た北原に、ルコの死体が見つかって警察が動いていることを知らされた。  やっぱり死んだのだ。俺が殺した。  震えが止まらない俺を北原は、「大丈夫だよ 」と抱き締めてくれた。  それは自然な流れだった。慰めるみたいに、そっと重ねられた北原の乾いた口唇。  不思議な程、抵抗感は無かった。  「好きだよ、南野 」  俺が頼れるのは、コイツしかいない。俺は、二度目のキスに、そっと舌を差し出した。  その、一週間後、俺は北原に抱かれた。いずれ早い内にこうなることに予感はあった。  北原は、「夢みたいだ、嘘みたいだ 」と言いながら、俺の中心に楔を打ち込んだ。覚悟をしていても、痛みに涙が零れる。  「ごめんね、好きだよ。大好きなんだ、愛してる 」  俺のことを抱きながら、北原は泣いていた。  男に抱かれるという、初めての経験に戸惑う俺を、北原は嵐の中に攫っていった。  
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