20人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「早いし、1回出して終わりだし 」
アハハッとルコが笑う。何が可笑しいんだ?オレを裏切っておいて。
「でも面倒臭い時とか、楽ちんだったよ。ンッて息止めたら、イッたって直ぐに騙されてくれるんだもん 」
怒りが段々、自分の中に満ちていくのが分かる。
ずっとずっと信じていた。可愛いくて優しい、自慢の彼女だった。
今、ここに居る女は誰だ? 同一人物だとは到底思えない。
「……ろして、やる 」
「え? コウくん、何か言った? 」
俺は部屋を飛び出すと、キッチンへと向かった。ガチャガチャと音を立てて、目的の物を探す。
「あった…… 」
キラリと輝く刃先のそれを見付けて、ハンドル部分を握りしめると寝室に戻った。
「いきなり、どうし……」
細い腕を背中に回し、ブラを身に付けながら、俺が手に持っている物に気付いたルコが叫び声をあげる。
「返せよ! 俺のルコを返せっ!! 」
「何言ってるの? コウくん、やめてっ! 」
「このっ、くそ女っ!! 」
ナイフを前に持ったまま、ルコに体当たりする。
ぶつかった時の、グッと刃物が人間の体にぐにゅりと突き刺さる感覚に、ハッとなった。
「あ…… 」
後退り、後ろに尻餅を付く。
不思議な光景だった。ルコの腹にナイフのハンドルが生えたように見える。
「え、え……? 」
下着姿のルコが刺さるナイフと俺の顔を交互に見比べた。
「何してくれてんのよっ! 」
そう言って、ナイフを引き抜くと、こちらへ投げ付けてくる。「ひっ 」と思わず、俺の口から声が漏れた。
傷口を押さえる指の間から、血がタラタラと零れているのが見える。
「い、熱いっ、痛い。やだ、私、しんじゃうの? 」
ルコはガクンとベッドの脇に座り込んだ。
「ねぇ、コウくん。助けて、助けてよぅ。痛い、痛いぃ 」
自分のしでかしてしまったことに、頭が追いつかない。
「う、うわぁあああああああ! 」
俺はナイフを拾うと叫びながら、部屋を飛び出した。
最初のコメントを投稿しよう!