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どうしよう。ルコを、人を殺してしまった。俺は警察に捕まるのか? 嫌だ、怖い。
恐怖に当てもなく彷徨っていると、突然、「南野? 」と声を掛けられた。
「偶然だな、どうしたんだ? こんな所で 」
振り向くと、そこにはバイト先の同僚である北原 波瑠が立っていた。ギクリとして、強張る手からナイフが落ちる。
カシャー……ンと、乾いた音が夜の住宅街に響いた。
しまった!
慌てて拾おうとするが、北原の方がひょろりとした長い手で、先にそれを手に取ってしまった。
「お前、これ…… 」
見上げてくる北原を誤魔化そうとするが、言葉が何も出てこない。第一、血濡れのナイフなんて、どう説明をすればいいんだ?
「お、俺…… 」
すると、北山は何故かそれを無造作に自分のトートバッグにしまうと、真っ青になっているだろう俺の肩を掴んだ。
「南野。話は後で聞くから、一先ず俺の家へ来い 」
どうすればいいのかも、どこへ行けばいいのかも、分からなくて、俺は北原に頷いた。涙が後から後からボロボロと溢れてきた。
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