セルロイドの恋

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 北原のアパートで、俺は全てを話した。北山は黙って、全部を聞いてくれた。  「俺、やっぱり彼女の家に戻る。まだ生きてるなら、救急車を呼ばないと 」  少しだけ冷静になった俺がそう言えば、北原は「駄目だ」と言った。  「血が凄く出ていたんだろう? なら、きっと死んでる 」  「じゃ、じゃあ、警察に 」  北原はそれにも強く首を振った。  「そんな女のために、お前が捕まる必要はないよ。そういう奴はきっと、いや絶対、他からも恨みを買ってる 」  そうだろうか、でも、だからって。  「け、けど……っ 」  すると突然、北原が俺のことを抱きしめて来た。 驚いて、ビクッと肩が揺れる。    「ナイフは俺が処分するから 」  「……っ?! そんなこと、お前に頼めないよっ」  「いいんだ、俺はお前がずっと好きだったんだから 」  突然の告白に、思わず身体が固まった。    「何、言ってんだよ。俺、男だよ? 」  「そんなこと、分かってる。分かってて、好きになったんだ 」  切なげな声。ぎゅっと抱きしめる力が強くなる。  「ごめん、こんな時に卑怯だよね。だけど、好きなんだ。だから、俺のこと信じて? 俺が絶対、南野のこと守るから 」  怖かっただろう?と言われて、また涙が出てきた。嗚咽を漏らす俺の背中を、北原は落ち着くまでずっと(さす)ってくれていた。 ◆  それから、俺は北原の部屋で匿われることになった。  本当はいつも通りの生活をするのがいいとは分かっていたが、何も無かったかの様に平然と大学へ行ったり、バイトへ行ったりするのは無理だった。  テレビもネットも、ルコのことが報道されているかもと思うと見ることができなかった。
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