すぐ隣にある世界

　時折、物語には世界は知る者の前ではひとつではない。といった言い回しを聞くが、それを物語の一部ではなく実際の事実として認識している者は人間界にどれだけいるのだろう？　認識は無くともあり得ると思っている者を入れても日本にはそう多くはないのではないだろうか。人はわかり合える。そんな幻想を信じ込んでいる現代人は理解の範疇(はんちゅう)を越えるものを容易(たやす)く否定する。それは酷(ひど)く冷たく、生きづらさという息苦しさとなる。
　だから、誰しもが１度は願ったことがあるのではないか？　その他大勢の多数派が経験してみればいいのに、と。きっと体験して初めて思い知るのだ。知ろうとしなかったたくさんのことを。