二口目 黒百合の女

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二口目 黒百合の女

 が起こったのは、出勤しようと自宅マンションを出た時だった。  突然、ずきりと左目に痛みが走る。    いたっ…!!  麻理は慌てて目を覆った。そうすると、少し痛みが和らぐ。  しかし、手を離すと再び痛む。どうやら、明るい場所だと痛みが出るらしい。    ……なんだろう…昨日何かしたかな…。  昨日はあれから、輝明と飲みに行っ他のは覚えている。  あった事を洗いざらいぶちまけて…それからの記憶が曖昧だ…。  気がついたら朝で、自分の部屋のベットにいた。  だいぶ顔がむくんでいたから、それが原因かもしれない。  そして、左目を庇いつつ、出勤した会社で噂を耳にした。    「ねぇねぇ、聞いた?園田さん、出勤中に駅の階段から落ちて病院に運ばれたらしいよ?」  「知ってる〜」  園田、とは、麻理の彼氏と歩いていたあの女だ。  駅の階段から、落ちて怪我をした…?あの女が…?  麻理の顔に、抑えきれない笑みが浮かぶ。  その時、光が入って再び目が痛む。俯いて、目を覆った麻理は自分の影の違和感に気がついた。  頭の部分が、半分ほど何かにかじられたように、ない。  え…?  何度見ても、麻理の影は頭が欠けている。  麻理の脳裏にある言葉が浮かんだ。  影食い様…?もしかして、影喰い様が願いを叶えてくれたの…?  麻理が思い浮かべたのは、ある人物。  昨日の夜に出会った、黒いドレスの女だ。  影など、これくらいならよく見なければわからない。  目の痛みは、明日眼鏡でも買ってくればマシになるだろう。    その時、スマホのメッセージアプリに彼氏から入った「今日会いたい」の言葉。    麻理の口元に笑みが浮かんだ…。      
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