13 こいつらもか?

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13 こいつらもか?

 それから数日。  俺達は同じ部屋で淡々と過ごしていた。  いつどこで呼ばれるかと思うと大学どころではない。  できるだけ一緒にいることにした。  そんなある夜。 「おい佐久田ー、誰が今日出てるー?」  俺はざくざく、と白菜を切りながらTVの番組の内容を問いかける。 「若手芸人特集だな。最近売れ出した連中」  俺達が割とよく見ているトーク番組。 「お題は『生まれてこのかた最悪だったと思うこと』だとよ」 「うっわ」  繰り広げられるトーク。  皆そんなに最近「最悪なこと」があったのか、大変なことで。  俺等なんか。  やや自嘲気味に、内心悪態をつく。  と。 「高村!」  佐久田の叫び声が聞こえた。  瞬間移動でもしたのか、というくらい奴は素早くこちらへ移動した。  そしてぐい、と俺を抱き寄せる。 「ななななな」  黙って佐久田は画面を指さす。  カメラは俺達も知っている若手芸人コンビを映す。 『やっぱコレって最悪ちゃいます?』 『なぁ』  並ぶ二人の揃って挙げた右手には、何処かで見た様な…… サモンピンクの封筒が…… 『大体コイツが、実はあっちの県でしたー、なんて、オレ言われるまで気付かんかったわ。どないしてくれる』  片方がそう言って相方の頭をげし、と殴る。  え、ちょっと待て、それ何処かで聞いた話だ。 『そんなコト言うたかて、生まれるトコ指定できひんし』 『オマエおかんの腹ん中で何とかできひんかったか?』 『キミ時々無茶言うな』  そんな応酬の後、彼等はふと黙り込み―― やがてひし、と抱き合った。 『ネタやったら良かったのになぁ』 『ホンマやわぁ』  二人はその場でおいおい泣き出し――  ……やがて、ふっ…… と消えた。  出演者の動揺が次々に映し出されて行く中、俺は自分の視界が次第に揺らぎ、色を無くして行くのを感じていた…
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