14 こうなりゃヤケクソ

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14 こうなりゃヤケクソ

 気付くとそこはアースカラーの空間だった。 「佐久田、なあ、ここ、何?」 「……判らん」  背後からの声はいつもより低い。 「怖いか?」  佐久田は問いかける。  俺は首を横に振る。  怖いという気持ちは奇妙な程に無かった。 『OK、れっつ・すたーと・ふぁいてぃんぐ!』  あの金髪男の声が響いた。 『何でもいいですよー。考えたものが出てきますよー。相手を抹殺できるのなら』  途端に俺はむっとくるものを感じた。  あの胸くそ悪い映像の中、彼等はいつもこんなことを言われてたのか? 『そうだあなた方は赤紙でお互いの気持ちを知ったんでしたよねー。今が幸せ絶頂でしょうねー』  声のする方向を俺は睨み付けた。 『相手を倒せばアナタが出られます。アナタが死ねば相手が出られます。さあどうします?』  でも、もし戻れても、それでどうする?   全国の視聴者が生き残った方が、相手を死に追いやったと知ってるじゃないか。  ああそうだ。  それで皆絶望したのか。  二人して死ぬ道を選んだのか。  冗談じゃ、ない。  怒りが更にふつふつと湧き上がる。  せっかく両思いになったというのに!   打開策はないのか?  ぐるり、見渡す。  もしかしたら。 「佐久田、戦おう」  眼鏡の向こうの目が大きく広がる。 「本気か?」 「お前とじゃない」  奴の腕を握ったまま、目を閉じる。  ドラマや映画やゲームで見知った武器をおぼろげながら想像しながら、出てこい出てこいと願う。  すると音を立てて武器が降ってきた。  銃だの剣だの刀だの、ああこれも判る、手榴弾。 「何を……」 「もちろん」  俺はぐい、と信管を抜き、勢い良く斜め上に投げる。  数秒。  アースカラーの中に、突然ひどい爆音と共に炎が広がる。  危ない、と佐久田が俺を抱え込んで伏せた。 「お前、何無茶なことしてるんだよ」  キーン、としている耳を押さえながら、俺は投げた方向を指し示す。  煙が出ていた。 「結末は、どうせ同じなんだろ!」  俺は金髪男に対して叫んだ。 「だったらここをぶっ壊してやる!」  いいだろ? と俺は佐久田に視線で問いかける。  奴は少しの間、黙りこんだ。眼鏡を取り、ふう、と軽くため息をつく。  どうだろう。  と。  ぐっ、と右手で腕を引き寄せられ。  ぐい、と左手で顎を掴まれ。  気が付けば深い深いキスをされていた。  これまでに俺がこっそり想像していたものよりずっと強烈だった。  …身体から力が抜ける。
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