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17 帰れないんですか、まあいいか
俺達参加者は移動し、部屋の真ん中にあるショウケースの様なものを見せられた。
「えー、さて、これがアナタ方の惑せい体の属する小宇宙です」
彼はショウケースの近くに両眼用の覗き眼鏡を出現させた。
「はい。これで見えるはずです」
我先に、と出る中で、佐久田の手が一瞬早かった。
奴はひどく不機嫌そうな顔になって俺に代わった。
闇に浮かぶのは確かに青い惑星。
「……地球は青かった」
「ガガーリンかい! 俺にも見せ」
「あっ」
よろける俺を佐久田が受け止める。
芸人の一人が次だった様だ。
「……なぁ、コレが俺等の地球ゆうなら、何で帰れないんや」
芸人のもう一人が険しい目で問い掛けた。
全くだ。
出てきたなら何で戻れない。
「すみません。アナタ方、既にこの付属装置の限界範囲で細胞拡大させてますから」
かくだい、と何名かの声がユニゾンになった。
「ええ。しかも残念なことに、またこれが旧式なので、拡大はできても縮小ができないのです」
「ポンコツや……」
全くだ。
「まあ心配なさらずとも、アナタ方は一応保護されて一定期間の生活の保証もされます。『ゲームの終了』は、宣告されましたし。キリの良いところで」
ふとその言葉に俺は止まった。
何となく嫌な予感がする。
「あのー、おまわりさん、キリのいいところって」
「はい。アナタ方が次の行動に移る辺りからですか。非常に素晴らしい恋愛表現をして下さったのでそれを区切りに」
と言うと。
芸人の一人は真っ青になってぼそりとつぶやいた。
「俺等伝説の芸人になってもうたわ……」
「嬉しくないわ!」
相方は真っ赤になってその場にへたり込んでいる。
お前等何をやったんだ何を。
他のカップル達も強烈な叫び声を上げる者やら、恥ずかしさにうずくまる者やら、相手にビンタを食らわせる者やら。
俺と佐久田も顔を見合わせ、声も無かった。
「帰れなくて…… 良かったかも」
思わず俺はつぶやいた。
すると佐久田は支えてくれた腕で背中から抱きしめてきた。
そして耳元で囁く。
「俺は高村と一緒なら何処でもいいけど」
うわうわうわ。
ぞくぞくっ、と耳元から一気にその声は腰にまで伝った。
すみません遠い場所に住む俺達の家族親戚一同皆々様。
俺達は帰れませんが、幸せになりますから、ご安心下さい。
微妙に不安は含みつつも、俺は佐久田の腕に自分の腕を絡めた。
絶対に離すものか、と思いつつ。
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