8 ひでえもんだ

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8 ひでえもんだ

 そう、問題はそれだけなのだ。  あの日を境に、「見えない壁」で分かたれた「アイする者同士」の元に、手紙が舞い込むようになった。  「戦争に参加せよ」と。  ある日突然、予告もなく。  サモンピンクのそれはいつの間に赤紙と呼ばれ。  彼らは数時間から数日以内にその場から文字通りふっと「消える」。  実感したのはお昼の生放送のトーク番組で司会の前から女性ゲストが消えたことから。  あっという間にサイケデリック万華鏡に切り替わった画面の中に、女性ゲストと見知らぬ男が映し出された。  お昼時、学食で「ありゃ誰だ?」等の言葉が飛ぶ中、金髪男の皮肉な声だけが響き渡った。 『さーあ、選ばれたアイし合う恋人達よ! 殺し合いましょう!』  「戦争」がようやく形をとった瞬間。  俺は「これか!」と頭を横からがん、と殴られた気分だった。 『ルールは簡単。相手を殺したら終わり。できないならずっとこの中。ここではアナタ方、お腹空きませんし疲れもしません。アナタは東。アナタは西。むふふふふ』  ぞくり。悪寒が走った。 『さーあ、がんばって戦って下さい。考えつく自分の最も得意なもので。何でも思えば出てきます。何がいいですか?銃? 刀? 爆弾? それとも包丁?』  この時を皮切りに、不意打ちにこの「戦争」が全世界一斉にTVモニタに映し出される様になった。
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