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「うわああああああああああああ!!!!」
叫び声を上げながら俺は目を覚ました。
そこは自宅マンションのベッドの上だった。
見慣れた天井を見つめながら呼吸を整える。
そして気付いた。
(ああ、今のは夢か)
どうやら高校の時のテストの夢を見ていたらしい。
尤も、実際の俺はよく勉強していたから、さっきの夢のようにテスト用紙を前にしてパニックを起こすようなことは無かったが。
(優等生だった俺があんな夢を見るなんて)
それ以前に、高校なんて卒業してから既に10年以上も経っている。
(全く、バカバカしい)
軽く笑いながら体を起こす。
気分は落ち着いたが心臓のドキドキはまだ収まらない。
起き上がると、頬と背中に冷たい汗が伝い落ちるのを感じた。
そして何気なく時計を見る。
「あ、ヤバい! 遅刻だ!!」
時計の針が8時過ぎを指しているのに気付いて俺は慌てて立ち上がった。
このままでは会社に遅刻してしまう。
大急ぎで身支度を整えて部屋を出る。
駅に向かうたくさんの人々。
彼らを掻き分けて我先にと駅を目指す。
(早く、早くしないと……!)
焦る気持ちが前面に出る。
今日は大事な商談がある日なのだ。
遅刻なんか許されない。
俺の出世が、ひいては人生が懸かっているんだ。
(頼む、間に合ってくれ!)
祈りながら懸命に走る。
ホームにいる電車が発車する聞こえる。
(ダメだ、間に合わない!)
この階段を降りればすぐなのに。
こんな大事な日に遅刻なんかしたら俺は社内での信用を失ってしまう。
出世の道はおろか、これまで営業のトップとして積み重ねてきた実績も。
絶望感からパニックを起こし、今にも叫び出しそうになった
──その時、背後から誰かに肩を叩かれた。
「おい」
「え?」
見れば、同期だったサトウが怪訝な顔をして俺を見ていた。
途端に、俺は悲鳴を上げた。
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