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11:誤算
七月に入った。
そろそろ天気制御装置が稼働することを話さなくてはならない。
雨の日しかまともに出掛けられないシラユキさんには辛い話になってしまうが。
この雨はもうすぐやんでしまうのだ。
「ミチルぅ! また女の子来てるぞ。くそリア充が」
「うん」
一時間目が終わって。
シラユキさんがやって来た。
いつも通り放課後は友達と遊ぶという報告だろう。
わざわざ言いに来なくても、スマホでいいのだが。
嬉しいからだろう。
「今日もだからね!」
「楽しんでおいで」
「ミチルくんのおかげ」
ただそれだけ伝えに来る。
その笑顔を見れば僕も嬉しくなってしまうのだけど。
今日も一人で帰ることになるのは少し寂しいが。
まあ、いいか。
「ふふん。いいねえ、ミチル。もっと話を聞かせてよ」
「やだよ」
「ならこうしよう、今日ゲームセンターでカーレースして負けたら話せ!」
「何を?」
「全部じゃい。決まりだからな」
「部活は?」
「休みでした! 残念」
急にヒロとの寄り道が決まってしまった。
驚いているうちに二時間目が始まって断れる空気になれず。
気づけば昼休憩だ。
「ミチル。見ろよ」
「ん?」
「お出掛け日和じゃね?」
弁当を平らげてしまっているとヒロに言われた。
ヒロが指差す先を、窓の外を見る。
黄色い、光が、温もりが天から伸びていく。雲がその光に譲るように去っていく。
悪寒がした。
どうして?
「ミチル?」
「シラユキさん!」
隣のクラスに駆ける。
移動教室だった。
それから、帰りにも寄ったが既に姿はない。
雨が上がった。
シラユキさんはどうするつもりだろう?
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