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12:君の居場所
学校の最寄り駅の数駅先で、僕とヒロはゲームセンターに来ていた。
カーレースをしても、リズムゲームをしても楽しめない。
ヒロは五分五分だと嬉しそうに言っていた。全力で楽しまずに他事を考えているなんて失礼なのに。
何度もシラユキさんにメッセージを送っているが既読がつくだけだ。
「次で決めるぞ! ミチル、クレーンゲームだ。お菓子をたくさん取れた方が勝ち。俺が勝ったらあの子のこと教えろよ。五百円で六回。もっとも取った方が勝ちな」
「うん」
ヒロは一回目は苦戦して一個だったが、慣れていって二回、三回と取れるようになった。合計
十九個という大記録だった。
「どうだ!」
「すごいな。負けないけど」
「ミチル、大丈夫か?」
「ああ」
五百円を投入する。
一回目、二回目はかろうじて一個ずつ。三回目、四回目は二個だ。
「あと二回で十三個。これで恋ばなコースじゃ」
ヒロが嬉しそうに言う。
そのときだった。
スマホが鳴る。
メッセージを開く。
『やっちゃった。引かれた。こんなに赤くなるって思わなかったみたい。火傷して痛いから、ファミレスで休んでる』
シラユキさんのメッセージだった。
『どこで?』
『それはね。ここ』
地図が送られてきた。
数駅先だ。
今ならすぐに。
「どうした? ミチル。あの女の子か? 負けたらどうせ話してもらうが」
「負けでいい。その子だよ、今行かなきゃだから」
「え?」
「ごめんっ!」
最低だ。
ヒロを置いて僕は走り出した。
まだ二回クレーンゲームができる、ヒロは立ち止まって。
「仕方ない。今度絶対話せよ!」
「もちろん」
駅まで走る。
憎い太陽は容赦なく照りつける。汗が出た。
天気制御装置が予想より早く直ったせいだ。
もうすぐ直るらしい、早く行っていれば何とかなったはずだ。
ファミレスに着く。
最も窓から離れた席に、白の混じった金髪の少女がいた。
顔も露出した肌も赤い。
「大分落ち着いてきた。けど、友達にドン引きされた。もうやだよ。また一人ぼっちだ」
雨なんて降ったままで良かった。
晴れなんて要らなかった。
僕と彼女だけが望む雨がいい。
どうしてシラユキさんだけが苦しむ必要がある?
「ミチルくん? 私怖いよね。真っ赤だし」
消えそうな声を聞いてハッとした。
「ごめん、僕のせいなんだ」
もうすぐ晴れるって聞いてたのに。
雨が上がるって知ってたのに。
やまない雨はないんだ、残酷にも。
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