3:シラユキさん

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3:シラユキさん

 翌日。  昼。教室で弁当を広げていると、友人のヒロに呼び出された。  どうやら教室の外に誰かいるらしい。 「女の子いるんだけど?」  ヒロは困惑交じりに言う。  女の子と聞いてあの例の公園ベンチの子しか思い浮かばない。 「どうかしました?」 「タオル、洗ったので返します。ミチルくんって言うんですね。友人の方に教わりました。私はシラユキです」 「シラユキさんか」  っていきなり下の名前?  距離感近くないか?  と女性関係が全くない僕は思うが。  屈託ない笑顔を見せられるとどうしようもないのだ。 「タオル汚くないですか? 臭くないですか?」 「うん」 「タオル助かりました。昨日は濡れたまま授業受けていたのですけどね!」 「今日も公園にいたの?」 「外、気持ち良いですよね。雨が大好きなんです。では、戻りますね」 「ああ」  梅雨なんて面倒だと思っているけど。  世の中にはシラユキさんのように雨が好きな人もいる。 「ミチル、いつの間に女の子と仲良くなってるんだよッ」  シラユキさんと分かれるとヒロに背中を強打された。 「たまたま登校で会って。濡れてたからタオル貸してたんだよ」 「それで納得するかよ。恋の予感だぜ」  ヒロは騒ぐ。  その日、何度もシラユキさん関連で話を振ってくるけど。  残念ながら面白い話はできそうにない。
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