第二十二話

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第二十二話

 素肌がくっつくだけで孤独で空っぽだった心が満たされるなんて知らなかった。  羽場の腕の中に閉じこめられ、頬や首に何度もキスをされて、赤い痕が残される。 目が合うとゆっくりと顔が近づく。  触れるだけの唇はすぐに離れてしまい、背中に回した腕で引き寄せた。  そうすると再び唇が降りてきて隙間を縫ってねっとりとした舌が入ってくる。  「んっ……ふっ、んん」  二人の舌が絡み合う水音が部屋に響き、興奮剤のように気持ちを高ぶらせた。羽場の指に突起を撫でられ、普段意識しない箇所だったのになぜか身体が跳ねる。  そこが気持ちよくなるなんて知らない。  自分の反応に驚いて目を丸くしていると羽場はふわりと笑った。  「気持ちいい?」  「わかんなっ……んっ」  また唇を貪られて非難の声は飲み込まれてしまう。  指が乳輪を辿り、突起を摘まれた。引っ張られたり、こねたりを繰り返され、奥底で秘められた感覚を呼び起こそうとしている。  「ほら、尖ってきた」  先端を爪先で弾かれると全身が強ばった。  「やぁ、あっ!」  さっきまで咥内を嬲っていた舌が今度は突起を弄んでいる。 吸ったり噛んだりを繰り返され、そのたびに腰が勝手に揺れてしまう。  びりりとした快楽は浬の脳を溶かしてしまう。少し甘えたような上ずった声が止まらない。  身じろぎしたときに太股が羽場の屹立に触れ、明らかに形を主張していた。  「早く挿れたい」  額に大粒の汗を垂らす羽場は切羽詰まっている。同じ男なのでどれだけ辛いのかよくわかる。  小さく頷づくとまたキスをされた。  下着ごとずり下ろされ、浬自身を曝け出されは。亀頭から体液が垂れていた。  屹立を眼前に晒され、こんな浅ましくていやらしい姿を見られて恥ずかしいはずなのに興奮している。  大きな手のひらに屹立が包まれ、上下に扱かれると血が駆け巡り、脳に快楽を叩きつけられた。  「だめ……そん、なっ、あぁ!」  「顔隠すな。もっとよく見せろ」  顔を覆っていた両腕を一つにまとめられ、 頭上に縫いつけられた。  羽場の視線を感じる。  浬の反応を見逃さないようにアーモンド型の瞳のは瞬きすらしない。  恥ずかしくて堪らないのに感じている姿を見られて身体が火照っていく。  「んん、あっ、あ……ダメ」  扱くスピードが速い。  血がどくどくと集まり、腰がずんと重たくなった。  「イくっ……やぁ、あっあぁ」  白濁が四方八方に飛び散り、視界がちかちかと点滅を繰り返す。  「勢いがいいな」  「……羽場くんが強くするから」  「俺の顔にまで飛んできたぞ」  羽場は口の端についた精液を舌で舐め取った。  「けっこうしょっぱいな」  「なんで舐めちゃうの!」  「人体に害はないだろ」  「そういうことじゃなくて」  「恥ずかしい?」  浬が頷くと羽場は声も出さずに笑った。  屈託なく笑う姿に涙が溢れる。  幸せだと思った。  もう手放さないと心に誓う。  「もしかして嫌だったか?」  「……幸せだなと思って」  「俺も。こんな満ち足りた気持ち初めてだ」  逃げているだけでは得られなかった幸福がいまこうして腕のなかにある。触れられる。夜空に浮かぶ星のように羽場はそばにいてくれる。  「そろそろ俺もいいか?」  ぐっと腰を押し付けられ、羽場の雄が腹に当たる。そういえばずっと我慢をさせてきたと思い出し、何度も首肯した。  羽場は人差し指を口に含み、たっぷりと唾液で濡らしてから、中に入ってきた。  羽場の爪の先に肉壁を広げられる。 想像したより痛みはない。  ただ腹が苦しくて、呼吸がままならなくて苦しい。  表情を曇らせる浬を気遣ってか、キスの雨が降ってきた。空いた手で突起を弄ばれ、 苦しさと快楽が合わさる。  「痛いか」  「ちょっと苦しいだけ」  「本当は引いてやるべきなんだろうけど。 悪い、限界なんだ」  指一本飲み込んだ頃になると二人そろってびっしょりと汗をかいていた。  羽場の汗が素肌に落ちる。むっとする男の匂いに、興奮は冷めない。  「少し動かす」  「うん」  中の指がぐるりと円を描いた。押し広げるようにして肉壁を解される。  奥まで進んだ指がある一点を掠めたとき息を飲んだ。  「ここか?」  「なっ……いま、やぁ、あっ」  「見つけた」  反応を示した箇所を執拗にぐりぐりと押され、快楽が走る。萎んでいた屹立がまた存在を示すように天を仰いだ。  「はぁ、んんっ……あっ、あ」  苦しさはどこかに消え、悦楽に翻弄される。  二本目もすんなりと受け入れられた。集中的に奥をかき回される。  中が柔らかくなったことを確認した指が引き抜かれ、代わりに羽場の性器をあてがわれた。  「挿れるぞ」  「まっ、あぁ!」  羽場の性器に奥まで貫かれた。 パチパチと目の前で星が散る。  「あっ、ぁん……あっ!」   羽場の動きは荒々しく、やさしさも気遣いもない。ただ欲望のままに浬を欲していた。  点字を打っている羽場の後ろ姿が浮かんだ。  周りの気配を気にせず、ただ黙々と作業をしてどこが機械じみていたのにいま浬を組み敷いて本能のまま腰を振っている。  こんな激情をいままで隠していたのか。  振り落とされないように背中に爪を立てると羽場の表情が曇る。  「ごめん、痛い?」  「もっと爪立てろ」  ずんとまた奥を犯される。気持ちいい。羽場の動きに併せて腰を揺らした。  必死に背中にしがみつき、何度も何度も爪を食い込ませた。  さっき達したばかりなのに限界はすぐそこまでやってきている。  「やぁ、イく……あっ、あ!」  背中に抱きつき、羽場とこれ以上ないほど密着し た。汗で湿った肌は体温と混ざって一つに溶け合えるようだった。  「んっ……イク、あぁっ、あっ!」  ぶるりと身体が震えて欲を吐き出した。同時に熱いものが注がれる。  気が遠くなるほどの快楽に溺れて羽場を見失わないように腕に力を込めた。
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