闇の組織

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闇の組織

 ある世界の果ての地下洞窟でいろんな組織が集まる集会が行われていた。  高潔な血を受け継ぐ者と主張する人たちは、かつては世界の国々のリーダーとして活躍していた人たちの子孫たちだ。  それぞれの分野で今も頭脳明晰な結果を出し続けてはいたが、共通認識は我々以外のくずは生きている資格さえないと言うものだった。  一部の人は普段からそれを隠そうともしていなかったが、狡猾な人たちは逆の仮面を被って世界を欺こうとしていた。そして、時々集会を開いては自分たちのパワーを確認していた。  その時が来たら動こうとしていたのだ。  とりあえず彼らは地球の環境保護を訴える。それが無難だからだ。  誰も否定はできない。  それを理由に、盾にして、いろいろな活動で世界を揺さぶるのが第一段階の攻撃だ。  そして世界の足並みが揃わなくなってきたところで第2段階だ。  パンデミックや局地的戦争でまた揺さぶりをかけてくる。  そうやって、実は魔法を使える女王ムムの仕事を増やして、世界のあちこちに死角を作るのが目的だった。  攻撃するチャンスを増やすことができるからだ。  最後には、彼らの子孫にも魔法を使える者がいるらしく、その最大の魔法が巨大地震らしいのだ。  それで、存在に意味のない人間を皆殺しにして、排除して、地球の環境を守ることを口実に、自分たちがこの世界のトップに戻ることを計画しているのだった。  ただ、過去にはそれで大成功もしているが地震は本人にも死のダメージがある極限魔法で、それを扱える者は絶えたとの情報もあった。  しかし、新たな存在の情報があったんだ。  今の彼らのリーダーが、過去にいないほどの魔力を持った少年だと言う。  彼がなぜ?それほどの魔法を使えるようになったのかは不明だが、10年前の女王の娘婿が巻き込まれた飛行機事故と関係があるようだった。  女王ムムには、その魔力を持った少年が今現在は17才だという情報だけが伝わっていた。    地下洞窟の会場は予想を越える人々が集まってきていた。  あきらかに世界は不満を募らせていたのだ。  変革がどんな結末になるかも知らない者たちが、革命というズキズキする言葉に誘われて集まってきているようだった。  まるで、自分たちが魔法使いになれるような気分なのだろう。  その中でマイクを握りしめ、話を始める男が登場した。  高級な背広姿で、頭は丸刈りの中肉中背の男だが、片耳にでっかいダイヤのピアスを付けていた。 「東の島国にいる魔法使いの女王は強い。とても強い。しかし、高齢だ。そして、我々にも、救世主が現れた。伝説の少女、零にも勝る魔法使いの神様だ。その方が、味方をしてくれることになっている。世界を、世界をこの手に、取り戻そうではないか!」  耳の鼓膜が破れそうなほどの賛同の雄叫びと拍手が地下洞窟の会場を響かせた。  そして、  ゆっくりと歩いて中央に進む者が現れた。  学生服に仮面を付けただけの格好で、耳には煩いからか耳栓をしていた。少し面倒くさそうな歩みでマイクを受け取り、話し始めた。  赤い仮面を付けてはいたが、ボサボサの金髪が目立っていた。 「俺はどっちの世界でもいい。でも魔法に頼る世界は嫌いだ。おまえらが世界征服しても、俺の魔法は期待するな、お前らで頑張れ。そのかわり後の世界に俺は何も言わない。俺の邪魔をしない限りはな。それから、緊急だけど、このあと、あの宮殿に一気に総攻撃を仕掛ける。その辺の準備とサポートをよろしく頼みまーす」  仮面をしていても、まったくやる気がない雰囲気は伝わり、ザワザワと洞窟は騒がしくなっていった。  そして話が終わると、少し頭を下げた瞬間に、彼の姿は消えた。  瞬間高速移動したのだろう。  彼が消えてからも会場は騒然としたままだったが、 「まぁ、まぁ。まぁ、まぁ」 「皆さんの気持ちはわかりますが、彼の魔法は本物です。凄いです。彼が言うのが本当なら、すぐに彼の力の片鱗を皆様も見れることでしょう。何かを言うならそれからでもいいんじゃないでしょうか?」  すると、また大歓声があがった。  司会をしていたある組織の代表。  彼は40代の若さで人望もある。  実質的な全体のリーダーだ。  皆からはK(ケイ)または、キング様と呼ばれていた。  
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